順序が逆ではないか。そう思った人も多いだろう。27日に行われた安倍晋三元首相の国葬を巡り、岸田文雄首相は有識者から意見聴取する考えを示した。

　官邸で記者団の質問に答えたもので、国民の意見や批判は真摯(しんし)に受け止め、今後に生かしていくという。それならば、国葬と決める前に国会に諮るべきだった。

　世論が二分する中、耳をふさいで突っ走り、事が終わってから意見を聞くというのは本末転倒だろう。多額の費用は国費でまかなわれる。

　今回の国葬を検証して今後の在り方を議論するのは大切だが、首相経験者の国葬は55年ぶりで戦後2例目。将来よりも今どうあるべきか考えてほしかった。

　岸田首相が繰り返した憲政史上最長の首相などの説明は国民の疑問を増幅させ、当日も国葬反対のシュプレヒコールが巻き起こった。それ以上説明のしようがなかったのなら、国葬には無理があったということだろう。

　故人を悼む機会が喧騒の中で幕を閉じ、国民に亀裂を生んだことを残念に思う人も多いはずだ。政治的要素の強い国葬は、安易な選択肢ではなかった。(増)