金曜時評

挑む心は商いの基 - 編集委員 松岡 智

 奈良財務事務所は県内経済情勢報告の7月判断で、総括判断を「緩やかに持ち直している」と9カ月ぶりに上方修正し、先行きでも新型コロナウイルスの動向などに警戒感を示しつつ、持ち直しの動きの継続に期待を寄せた。新型株での感染急拡大が懸念される状況ではあるが、ワクチン接種の進行や諸外国の経済回復傾向などとともに県内事業者らのマインドにも前向きな様子が目立ち始めた。

 コロナ禍当初は後手に回った事業継続計画(BCP)でも、存続優先だけでなく、緊急時でもよりよい形で将来に事業をつなぐ意思を込めた見直しも見られるようになった。コロナ禍のなかで取引先を含む事業の見直しで赤字から黒字に転換した企業や、利用者目線の徹底した感染症対策に基づくサービスで満足度、利用率を高める宿泊施設などの動静も耳にする。

 非常時に自社の特性、得意分野を再点検し、社会情勢の変化に応じた対処をすることや、新たな展開を模索することは事業活動に不可欠なチャレンジの一つだ。コロナ禍で一定の成果を残そうとする試みも、その場しのぎではない。

 事業関係者が県内での新たなビジネスアイデアの事業化を図る挑戦も昨今、頻度が増したと感じる。既存事業者が創業時の志、現事業の意義を再考して打ち出した新展開や、起業家が県内の現状から発想を膨らませた事業計画を発表し合う新規の取り組みにも触れた。関係者の姿からは、コロナ禍のさなかでも立ち止まらず、挑戦する姿勢が必要な時期に来ていると捉えていることがうかがえた。

 また存続の危機に各種融資を活用する事業者には、返済の時期がやがて来る。どう計画的に返済し、利潤を上げるかの道筋を描くことも大きな挑戦といえる。コロナ禍での打撃は業種業態、事業者によってまちまちだ。ただどんな状況であれ、商いに対する熱意や挑戦する気概をなくせば先細りは否めない。潮目の変わり目を追うばかりでなく、すでに変わっているとの意識で準備を図らなければ、いざその時に出遅れて後悔することにもなる。開催中の東京五輪でも逆境で準備を怠らなかった選手、あきらめなかった選手が栄冠をつかむ例が数多いのではないか。

 一方で、消費者側も事業者の窮状を対岸の火事と見ていていいものだろうか。ルールを順守し、努力を惜しまぬ事業者には寄り添っていくべきでは。事業が頓挫し、公的融資が無駄になれば、原資の補てんで自らに影響が及ぶ可能性も頭に入れておく必要はある。

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