注目記事山下県政 世論調査の全結果掲載

金曜時評

「なぜ奈良に緊急事態宣言が出されないのか」 - 主筆 甘利 治夫

 多くの県民から悲鳴にも似た声が上がっている。隣接する大阪をはじめ近畿の兵庫、京都の3府県には宣言が発令され、しかも延長された。重症者病床が不足するほどの危機的状況が伝えられるが、「宣言が出ていないのだから奈良は大丈夫」との思いが、広がっているようだ。

 新型コロナウイルスの感染者が急増している沖縄県が、ついに要請に踏み切り、宣言が出される。直近1週間で、人口10万人当たりの感染者数が25人以上なら、ステージ4の段階となり、連日の感染者数をみれば分かるように、30人以上となっている奈良も該当している。

 奈良市をはじめとした首長や議会、そして各政党や団体が、挙げて荒井知事に、国に対して緊急事態宣言を要請するよう申し入れてきた。しかし、実効性のある県独自の「緊急対処措置」を作成し、対応することで、宣言の要請には慎重な構えでいる。

 確かに個々の内容をみれば、効果も期待でき意味がある。時短要請に応じた飲食店などに協力金を支給するし、重症者病床の増加といった対策も必要に応じて行っている。

 ただ「緊急対処措置」と言われても、知る人ぞ知るで、危機感がまるで伝わってこない。他府県に発令されている「緊急事態宣言」であれば県民にも「奈良もか」と緊張感も高まるし、近隣府県から遠出してくる人も減る。

 会見で荒井知事は「宣言によって(人流抑止の)効果があるかが重要だ」との認識を示しているのだから、「宣言」の文字や言葉の重みを知ってほしい。「奈良は対処措置をしています」といっても、どれほどの県民が、危機意識を共有しているか疑問だ。「対処措置ってなあに」と、そんな措置が出されていることも、その言葉さえ知らない人が多い。本紙も詳しく報道してきたが、多くのメディアは全国の状況や宣言地域の実態を伝えるのみで、県の措置対応が霞んでしまう。

 就任以来、荒井知事は医療問題に熱心に取り組んできた。今度のコロナ対策も、実効性のあるものにとの意欲が見える。しかし、県民の間に「本当に危機的状況なら緊急事態宣言がなぜ出ないのか」という不信感が増大している。

 県民が危機意識を共有し、他府県の人の認識も改めさせるには、宣言の要請に躊躇(ちゅうちょ)すべきでない。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド