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金曜時評

再生刷新の契機に - 論説委員 松井 重宏

 県内の衆参選挙区で議席を独占する“自民党王国”が突然、崩壊した。3区選出の田野瀬太道衆院議員が緊急事態宣言の最中、銀座のクラブで飲食していたことが発覚し、同党を離党。衆院議員は任期満了が10月21日に迫っており、3区の候補者問題が、改めて急浮上している。

 県在住の男性が国内初の感染例として報告されて1年余り。新型コロナウイルス対策は、ワクチン接種の準備が始まる一方、10都府県で緊急事態宣言の延長が決まるなど、新たな局面に踏み出すための切所を迎えている。そんな時期だけに、問題の安易な決着、火消しは許されない。

 田野瀬氏は二世議員。市議から県議を経て衆院議員になった父親の田野瀬良太郎氏の地盤を継ぎ、現在3期目を務める若手だ。菅政権では文部科学副大臣に就くなど将来を嘱望されている。ただ周辺には同氏の行動に「甘さ」があることを懸念する声もあり、地元支持者に対する説明責任も含め、同氏の判断、進退が注視される。

 選挙区の再編で新たに設置された3区は、初の平成29年選挙で自民党、希望の党、共産党の3党が公認候補を立てたが、次期総選挙に関して野党勢はまだ人選を終えていない。こうした中で、優位とみられていた自民党現職が離党したことで起きる波は大きい。

 3区の中心地の一つ、橿原市では折から市議選挙の真っ最中。田野瀬氏の秘書から県議を経て令和元年に初当選した亀田忠彦市長のもとで行われる初の市議選で、保守層の票の動きに注目が集まっている。

 今後は同選挙結果と田野瀬氏の進退も見極めつつ、各党の3区候補づくりが進むことになるが、野党勢にとっては保守色が強い3区で足場を築く好機。限られた時間を言い訳に候補者を急造するのではなく、しっかりとしたビジョンと体制を整えて、有権者に選択肢を示す姿勢が欠かせない。

 また自民党には、今回の問題が起きた背景として個人の責任だけでなく、保守王国のおごりや気の緩みがなかったのかも問われそうだ。党内には、田野瀬氏の後任として前回選挙で比例代表に回った奥野信亮氏や前橿原市長の森下豊氏らの名前も挙がっているようだが、安倍長期政権に安住してきた反省も求めたい。

 コロナ禍の中で起きた醜聞が単なるドタバタ劇に終わるのでなく、3区の、そして中・南和地域の政治風土や体制が再生、刷新される契機になるよう期待する。

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