金曜時評

必要な備え着実に - 論説委員 松井 重宏

 近年は豪雨や突風による災害が国内各地で常態化。近く発生が想定される大規模地震への備えも含めて防災、減災を目指す取り組みが官民挙げて進められている。ただ実際の被害を見れば、なお想定外の事態が起き、対応が後手に回るケースも後を絶たない。

 今月9日には首都圏を台風15号が直撃。強風などにより関東地方の広い範囲で停電が発生し、千葉県では全面復旧がきょう13日以降にずれ込むなど、住民生活に深刻な影響が広がっている。電柱など送電施設の被害が予想された以上に大きく、復旧時期に関する情報が錯そうするなど、電力事業者の判断の甘さが露呈した。

 一方、昨年の7月豪雨では河川氾濫による洪水が「想定」されていたにもかかわらず、住民の避難が遅れ、被害を広げた。これらを教訓に県は本年度内の改定を目指す地域防災計画で「正しい避難行動の周知、安全な避難の実現」を第一に取り上げ、住民らへの伝わりやすさを重視した情報発信にも取り組むとしている。

 もちろん、既知の危険を回避するための施策が重要なのはハード整備でも同じ。大阪府北部地震では問題視されていた通学路のブロック塀が倒壊、児童が犠牲になる結果になったが、県内ではブロック塀の撤去とともに、県立高校の校舎や県有施設など公共性の高い建物の耐震補強問題に注目が集まっている。

 また県が、全県で進めている土砂災害警戒区域などの指定作業では、より危険性の高い特別警戒区域内に多くの「代替性のない避難所」や「24時間利用の要配慮者利用施設」があることが判明、対応が喫緊の課題だ。

 ハード整備には相応の期間と予算が必要となるが、人命に係わる問題で「見て見ぬふり」は許されない。特別警戒区域内の避難所などについて県は、土砂災害対策施設整備計画の策定を予定。その中で対策の必要性を精査、施設や範囲を絞ることで対応のスピードを上げる姿勢を示している。対象施設に漏れ落ちはないのか、また市町村や民間の施設設置者らの責任ある対応も求められることになりそうだ。

 大規模災害が起きたとき、想定外の事態で慌てないよう、事前に十分な調査、検討を行っておくとともに、今後は「分かっていたのに対応できていなかった」をどうなくすかが課題になる。行政だけでなく、民間企業や一般住民も意識を高く持ち、安全で安心できる地域づくりを進めなければ。

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