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金曜時評

未来志向で改革を - 編集委員 松岡 智

 今年4月の働き方改革関連法の施行開始と前後して、各界で改善への動きが活発化している。以前から特別な職域の一つの教職の世界にも変革の波は訪れている。

 経済協力開発機構(OECD)の平成30年調査では、日本の小中学校の教員が、参加した加盟48カ国・地域(小学校は15カ国・地域)の中で最も労働時間が長いことが、25年の前回調査に続いて分かった。併せて、課外活動や事務業務に要する時間が最長の一方、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」の取り組みや知識、専門性を高める職能開発の時間の不足も明らかになった。

 県内の教員も同様なのが、県教育委員会が今年1、2月、小中学校、高校の教員らに行った調査で判明。学校滞在時間の長さとともに、事務業務や部活動、保護者対応といった部分の仕事量が多く、休養不足はもちろん、教材研究や学習指導などが思うように進まない実態が浮かび上がった。

 現状の改善が他の職種にも増して急務で、重視されるのは、教員らの心身の健康維持や自己学習、指導の充実が児童、生徒の成長、学習能力向上にも深くかかわってくるからだ。大げさに言えば子供、国の将来にも関係してくる。

 あまたの先人が有用な発想は時間、心にゆとりのある時に生まれるとの助言を残している。子供への十分な目配りを確保した上で何をどう削るかは慎重でなければならないが、時間に追われた中での無理の蓄積は周囲に影響を及ぼし、破たんを招く危険性をはらむ。

 県では6月、国のガイドラインに沿った改善を念頭に、県教委や教育現場、市町村教育関係者らによる「学校における働き方改革推進会議」がスタートした。アンケート結果を踏まえ、超過勤務の上限などの方針案を来年1月をめどにまとめることにしている。

 また奈良市内の小学校の中には、毎週決まった曜日を残業をしない日に設定したり、日常業務、課外活動の省力化を図るなど、働き方の抜本的見直しをいち早く実践しているところもある。

 今後の改革の推移が注目されるが、教員の立ち位置や業務が社会状況とともに変化し、学校規模の問題や新学習指導要領の開始なども控え、仕事量削減は頭で考えるほど容易ではないだろう。ただ改革の実現が社会を支え、未来を担う子供たちのためでもあるとの広範で長期的視点は忘れずにいたい。同時にその改革には保護者や周囲の理解、協力が不可欠であることも認識しておきたい。

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