金曜時評

どうする”負の遺産” - 主筆 甘利 治夫

 存続の意味が問われている。平成13年9月に、明日香村飛鳥に開館した県立万葉文化館のことだ。

 当初、年間25~30万人と見込んでいた入館者数は、半数以下の10万人前後という。しかも140億円もの巨額資金を投入して建設し、運営費も人件費を含め年間3億5000万円、累計で50億円以上も負担してきた。柿本善也元知事の執念さえ思わされた肝いり事業だっただけに、実態はどうなっており、本当に必要なものだったのか、”負の遺産”とも指摘されている同館を平成時代が終わろうとしている今、しっかり見直すべきだろう。

 同館は、万葉集をテーマに、古代文化の魅力を視覚的に紹介する「展示」(美術館・博物館)や「図書・情報サービス」(図書情報室)、そして調査・研究(万葉古代学研究所)の三つの機能からなっている、とされる。そのような建造物であることを、どれほどの県民が知っているか。県民の何人が足を運んだことがあるか。建設に賛成した県議の何人が訪れたか。観光客がたまたま寄ったり、企画展の素晴らしさで来館する人もいよう。

 オープンの日を含め、何度も企画展に足を運んだが、立地の悪さを痛感する。近鉄橿原神宮前駅から、路線バスを利用すると相当時間がかかる。タクシー利用なら入館料の数倍の料金だ。近くに飛鳥資料館やキトラ古墳壁画体験館「四神の館」、県立橿原考古学研究所付属博物館もある。いずれも日本のふるさとの地にあって、古代に触れることができ、「これぞ明日香だ」と実感できる。それだけに万葉文化館に対するイメージが明確でない。

 造成時に、わが国最初の貨幣である富本銭が発見され、地元住民らを中心に建設反対運動も起きた。「無謀な開発」と批判されながらも建設は進められ、当時を知る建設業者は「何が何でもあの地に建てるという、柿本元知事の執念を感じた」というほどだ。

 滑り出しは入館者数も好調だったが、それでも最高で年間14万人。そして昨年9月には館内の飲食店が閉鎖された。また愛好者で組織された「万葉文化館友の会」(里中満智子会長=漫画家、会員6000人)もこの3月末で解散する。

 荒井知事が有識者会議を設置して検討するとしているが、そもそも建設する必要があったのか、という根本的な問いかけをすべきだ。交通不便なあの地になぜ建設しなければならなかったのか。

 そして当時、建設に賛成した県議会の責任も問いたい。

 巨額資金を投入し、経費が膨らんでいる現状を考え、時代の変わり目の今、廃館など思い切ったことをせねばなるまい。

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