金曜時評

心のケアを大切に - 編集委員 松岡 智

 テニスの大坂なおみ選手の全米オープン女子シングルス優勝や、前回のラグビーワールドカップで日本代表が強豪を倒し、好成績を収めた背景にはメンタルケアの充実があったことが知られている。個人の能力を最大限に引き出すために、心の充実はより重要視されるようになっている。

 労働者の心理的負担の程度を把握し、メンタル面の不調を未然に防止することなどを目的に、従業員50人以上の事業所に毎年1回のストレスチェックが義務付けされたのは平成27年のこと。奈良労働局によれば、現在、県内当該事業所の約8割が実施報告を行っているという。

 こうした状況の中、同局などは今年7月、従業員50人以上の事業所を対象に、メンタルヘルス対策などのアンケート調査を初めて行った。結果によれば、実施しているメンタルヘルス対策として、73%の事業所が相談窓口を設置していると回答した。

 ただ、窓口がどの程度のものかは不透明。一定の専門知識を持つ人を配置しているのか、単に名目だけの担当者を決めているだけなのか。それだけでも相談者への対応、後々の効果はずいぶん違ってくる。

 懸念を抱く理由は、複数回答可能な同じ設問で「職場環境等の把握と改善」「教育研修」「情報提供」といった対策の実施がいずれも5割程度か、それ以下にとどまっているからだ。「心の健康づくり計画の策定」は2割でしかない。さらに今後実施したい対策では、ほとんどの項目が2割台。同局でも対策支援を目的に、事業所担当者らに専門的知識を学んでもらう各種セミナーを企画しているが、事業所側の反応は積極的とは言い難いようだ。これでは前提のストレス検査の実態にも疑問が湧く。

 県内で中心の中小、小規模企業の人手不足が深刻化する状況で、現有人員の能力を引き出し、高めたり、心の病に陥らせないことは各事業所の喫緊の課題。従業員を定着させ、求職者からも注目される働きやすい職場づくりの一つとしても、メンタルヘルス対策の充実は検討されるべき要素だ。

 事業所規模にかかわらぬ働き方改革は多様な側面を持つが、人を大切にするとの考え方は根幹を成す部分といえる。従業員を大事にする事業所が離職を防ぎ、前向きな姿勢を生んで業績向上につながっている例は県内各地で見聞きする。一方でメンタル面への対策、充実を怠ることは手の内にある貴重な財産を失う可能性があることを、事業者は忘れてはならない。

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