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金曜時評

教訓生かし前進を - 論説委員 増山 和樹

 大阪府北部を震源とする18日朝の地震は、県内でも強い揺れとなり、交通網を中心に大きな混乱をもたらした。地震の巣である活断層は県北・中部を縦横に走っており、直下型では甚大な被害が出ると予想されている。日頃の備えを見直す機会としたい。

 地震の発生は午前7時58分ごろ。県内の近鉄線、JR線は一時各線で運転を見合わせた。安全確認後は順次運転を再開したが、JR奈良線や桜井線はそのまま終日運休となった。電車の停止に伴い、踏切の遮断機が各所で降りまま上がらず、渋滞に拍車をかけた。

 踏切で行き詰まった車列が国道に伸びて混乱を増幅させるケースも見られた。重大な被害が発生している場合、住民の避難や緊急車両の通行に影響が出る可能性がある。今後を見据えた対策が必要だろう。主な陸橋や地下道の位置は、普段から把握しておきたい。

 通勤・通学時間帯に鉄道がストップしたことで、職場や学校にたどり着けない人が数多く出たが、鉄道のまひでより深刻なのは帰宅の問題だ。冬季であれば、たとえ一晩でも暖房のない場所で過ごすのは厳しい。電車の運転を早期に再開できる方策はないか、事業者だけでなく、行政も協力して考えてほしい。

 東日本大震災後、奈良市や生駒市は大阪を基点とする山越えの帰宅訓練を市民参加で実施した。暗峠越えなど厳しいルートもあり、参加者から「道に迷いそう」「勾配がきつく苦しい」「都市部と山間部で休憩施設に大きな差がある」などの声が出ていた。万一に役立つ道しるべや休憩施設の整備は進んでいるだろうか。

 今回の地震では、身近な家具や構造物が凶器と化すこともあらためて見せつけられた。昭和53年の宮城県沖地震で18人の犠牲者が出たのをはじめ、ブロック塀の危険性は大きな地震のたびにクローズアップされてきた。家具の転倒被害も同様である。危険因子の摘み取りは進んだはずだが、十分ではなかった。

 奈良盆地東縁断層を震源とする直下型地震では、県内の最大震度は7、犠牲者は5千人余りに上ると予想されている。このような大災害がいつか起こる。

 鉄道のまひ、帰宅困難者、ブロック塀の倒壊。同じ教訓を繰り返しながら、それでも一歩ずつ前に進まねばならない。過去を振り返ることが未来の命を守ることにつながる。

 

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