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万葉車窓

元山上口-東山(近鉄生駒線) - 小さな滝に見る昔の猟場

 生駒山地と矢田丘陵に挟まれた平群町。竜田川に沿って家々が並ぶが住宅開発が進み山麓(さんろく)にも家が増えている。竜田川は元山上口駅から上流にあたる東山駅付近にかけて渓谷を描く。この辺りは武内宿禰(たけのうちのすくね)の子、都久(つく)宿禰を祖とする平群氏の本拠地だった場所だ。

 『 八重畳 平群の山に 四月(うづき)と 五月(さつき)との間(ま)に
         薬狩(くすりがり) 仕ふる時に あしひきの この片山に 二つ立つ 』

 と「乞食者(ほかひ)の詠める」一首にあるように万葉の時代には薬狩の猟場となっていた。薬狩は、薬として用いるため鹿の袋角を獲る猟。現在でも生駒山地には緑豊かな自然を見ることができる。

 平群町椣原を走る近鉄生駒線は大きな岩の渓谷を横目に見る。車内からはあまり見えないが周囲に住宅地が迫ているとは思えないような風景だ。古刹(こさつ)・金勝寺や竜田川にかかるカンジョウナワなどが沿線に見られるこの地区は、川の両側にせり出す山のすき間に家が並ぶ。カンジョウナワや近鉄の鉄橋を過ぎると竜田川は90度曲がり小さな滝となる。

 意外なところに自然を発見すると昔の猟場を彷彿(ほうふつ)させるが、川の水はねずみ色。よどんだ所では泡が渦を巻く。だが小さな大自然の発見にちょっとうれしくなった。

 

写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)

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