6日の広島に続き、きょうは長崎で「原爆の日」平和祈念式典が開かれる。米軍による原子爆弾投下から78年、長崎は鎮魂の祈りに包まれる。

　だが、台風6号の九州接近の影響で、式典が室内での開催となり、規模が大幅に縮小。岸田首相ら来賓も招待されないことになった。残念だが、台風には勝てない。

　約5万人が参列した広島では、松井一実市長が平和宣言で、5月のG7広島サミットでの核軍縮文書「広島ビジョン」が肯定した核抑止論について「破綻していることを直視し、為政者に脱却を促すことが重要だ」と指摘した。

　だが、首相は「『核兵器のない世界』実現に向けた努力をたゆまず続ける」と、お題目のような言葉を述べただけだった。非核どころか、核兵器使用を脅しの道具に使うなど、核の惨劇を無視する国まで出てきた現状への危機意識が感じられない。

　一歩踏み出して、核保有国と非保有国との橋渡しを果たせるのは、唯一の戦争被爆国であるわが国しかない。

　被爆者手帳を持つ国内外の生存者は3月末で11万人余。平均年齢は85・01歳。時間が、もうない。(恵)