特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

地域活性化で自立 - 論説委員 松井 重宏

 新型コロナウイルスと共存していく「ウイズ・コロナ」時代に適合した社会とは、どうあるべきだろう。県内では荒井正吾知事が掲げる「自立した地域づくり」の推進が一つの方向性を示す。

 コロナの新規感染者は県内でも7月から再び増加し、8月中旬には126人とピークに達したが、その後は同下旬=56人▽9月上旬=23人▽同中旬=11人(いずれも発表日ベース)―と漸減傾向で、全国的にも流行の「第2波」は落ち着きを見せ始めている。

 ただ感染の終息を見通せる状況にはなく、有効なワクチンの開発、普及がない限り、感染が再拡大する可能性は大きい。そのため今後もウイルスと共存しつつ社会・経済活動を進めていく「ウイズ・コロナ」戦略が、これからの行政や民間企業の重要課題だ。

 そうした中で新たに浮上しているのが複合災害への対応。豪雨や地震の発生時に避難所で感染をどう防止するのか、また季節性インフルエンザとの同時流行への備えが、いま問われている。

 一方、中長期的には「コロナ以前に戻る」ことを目標とするのではなく、IT戦略の推進など「新時代」につながる取り組みを求める視点が重要になる。感染症対策で普及したテレワークなどを追い風に、菅政権はデジタル庁の創設を計画、行政手続の迅速化やマイナンバーカード活用の促進を打ち出す。また教育現場では長期休校の経験を、パソコンと高速ネットワーク環境を整備するGIGAスクール構想の促進につなぐ。

 そして県が抱える独自のテーマと結び付く施策が「県内消費の喚起」「大阪依存からの脱却」など自立した地域づくり。コロナ禍で打撃を受けた観光の回復を目指す「いまなら。キャンペーン」は発売初日にクーポンが完売し混乱も招いたが、県民限定の観光振興が狙い。市町村が発行するプレミアム商品券などに県が同額を上乗せ支援する事業も、県外消費全国1位の是正を目指す取り組みだ。

 また8月の県・市町村長サミットでは、県内の新たな土地利用として住居系主体から、今後は商業系、工業系の増加を目指す方針を提言。コロナ禍では大阪に通勤・通学、買い物などで出掛けた際の感染が相次いだが、県内で働き、暮らせる「脱ベッドタウン化」の進展につながるか注目される。

 まちづくりや工場誘致、施設整備などは地元の協力が不可欠。県と市町村が連携して進める「奈良モデル」事業の成熟も重要なポイントとなりそうだ。

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