注目記事山下県政 世論調査の全結果掲載

金曜時評

友好の手を今こそ - 論説委員 増山 和樹

 小学館は2日発売の「週刊ポスト」に掲載した「韓国なんて要らない」と題した特集を巡り、配慮に欠けていたとして謝罪を表明した。特集では「断韓」を呼び掛け、「怒りを抑えられない『韓国人という病理』」などの見出しが踊る。元徴用工訴訟やあいちトリエンナーレの「平和の少女像」を巡る問題など、日韓関係は冷え込む一方に見える。

 国民感情のガス抜きが政治的に利用され、結果として国民をさらに苦しめることになるのは過去の歴史が物語っている。政府は「ホワイト国」(優遇対象国)から韓国を除外した措置を輸出管理の運用見直しと説明するが果たしてそうだろうか。週刊誌の過激な記事で留飲を下げたところで問題は何も解決しない。

 本紙8月15日付の連載「74年目の戦争遺跡」で、天理大学国際学部の熊木勉教授(朝鮮近現代文学)が「政治と切り離して私たちが取るべき姿勢は冷静であること、相手の考えを侮蔑(ぶべつ)しないこと、これまで育んできた成熟した交流を大切にして粛々と進めること」と語っている。日韓両国に対して言えることだ。

 最近も県内では韓国を含めた交流事業が行われた。奈良市の東アジア文化交流プログラムに参加した韓国の大学生は「政治とは別の関係が築けてうれしい」と語った。8月31日には駐日韓国大使館主催の「韓日文化キャラバンin奈良」が同市で開かれ、ナム・グァンピョ駐日韓国大使は「両国民が互いに対する信頼と愛情をもって真の友情を築き上げれば、どのような難しさでも乗り越えていける」と呼び掛けた。

 ツイッターでは「♯好きです韓国」「♯好きです日本」のハッシュタグをつけた投稿が増えているという。そこに見えるのは政府と国民は別との思いである。両国の関係にとって大切なのは、国民一人一人が真の国益を考え、自分をしっかり持つことだ。互いの隣には、北朝鮮という脅威が控えることも忘れてはならない。

 天理市が予定していた姉妹都市・韓国瑞山への中学生派遣事業が韓国側の意向で中止されるなど、民間交流にも影響が出ているのは残念だ。県内には、ほかにも韓国の都市と姉妹都市などの形で交流している自治体がある。韓国側の現在の姿勢が将来にまで影を落とすことがあってはならない。

 「嫌」や「断」の文字で語れば悪感情はさらに高まる。視野を広げ、友好の手を差し出し続ける先にこそ、関係改善の希望がある。

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