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万葉の景色

吉野川の簗漁

古来の知恵、現代に復活

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▲吉野川に竹をすだれ状にした簗を設置し、
アユを捕獲する伝統的な漁法の一つ、簗漁を再現。
川を身近にと吉野川やな漁保存会が行う【五條市の大川橋下】

 産卵の時期を迎え、川を下るアユ。川で生まれ、海で越冬。春に川へ戻り夏を過ごし、秋、一生を終える。万葉の世界では大伴旅人、家持親子らがアユを題材に多くの歌を詠んでいる。かつて、吉野川では、落ちアユを捕るためにたくさんの簗(やな)場があった、という。

『 安太人の 魚簗うち渡す 瀬を速み 心は思へど 直に逢はぬかも 』 作者不詳(巻11~2699)

 安太と詠われた地は現在の五條市東部、吉野川流域と思われ、東、西、南阿田などの地名が残る。簗を打つ瀬の流れは早く激しい。その流れのように周囲が厳しく、気持ちはつのるものの会えず心苦しい…。簗は川にくいを打ち、竹を並べた簀(す)を張り、打ちあがる魚を捕る仕掛けだが、古事記や日本書紀にも五條の簗が「吉野川の河尻に至りし時、簗をうちて魚を取る人あり。…阿田の鵜飼部(うおいべ)の祖なり」などと記述され、古の昔から人々の生活を支え豊かな文化を育んでいたことがうかがえる。

 3年前の平成14年、「吉野川やな漁保存会」が結成され伝統的な漁法の一つ、簗漁が同市中心部、大川橋下に復活。4年目の今年も日差しが短くなり、卵で腹を膨らませたアユが川を下りだした9月初旬に仕掛けを設置。雨上がり、川が濁り適度に増水した時や日の出直後、日の入り後などが大量に捕れるチャンス、と話す保存会のメンバー。ウナギなどが捕獲されることもある。

 魚類の生態を巧みに利用したユニークな漁法。「川を身近に親しんでもらう機会に」とも。五條市は先月25日、隣接の西吉野村、大塔村と合併し新生・五條市がスタートしたばかり。観光活性化の目玉としても期待がかかる。

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▲卵を抱いた落ちアユが簗に打ち上げられる。
増水し水が少し濁った状態の時が狙い目とも


写真と文 牡丹 賢治


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