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万葉の景色

率  川

清らかな川音、乙女に重ね

▲万葉の昔、「…音の清けさ」とうたわれた率川。
現在、大半が暗渠化されたが、
猿沢池の南に川の改修の際、
掘り出された石仏が流れの中に安置されている。

 「…音の清けさ」と詠まれた率川。春日山を源に春日野を抜け佐保川へ流れる。今は大半が暗渠(あんきょ)になり、人の目に触れることはほとんどない。そんな中、猿沢池の南に、往年をしのぶような小さな舟形の島があり、石仏が十数体安置されている。川が改修された際、掘り出されたものとか。何やら独特の趣が漂う。しかし川といったイメージはなく、池を避けるように地下水路となって流れ去る。

 万葉の時代はどうだろう。率川の流れを初々しい少女に重ね、

『 羽根かづら 今する妹を うら若み いざ率川の 音の清けされ 』 
  作者不詳(巻7―1112)

 と詠んだ。「羽(葉)根かづら」は鳥の羽、またはショウブの葉などでつくった髪飾りと考えられる。当時の乙女は、かづらはおしゃれに欠かせないアクセサリーだったに違いない。羽根かづらをつけたばかりのうら若い恋人を、いざいざと誘いたくなる。そんな率川の川音の清らかさよ。近鉄奈良駅そばの高天(たかま)交差点を南へ。やすらぎの道沿いの率川神社境内に碑がある。

 大神神社の摂社で毎年6月、「三枝(さいくさ)祭り」が開かれる。昔、三輪山に咲くササユリを供え、疫病の流行を鎮めたという古事にちなむ伝統行事。ゆり祭りとも呼ばれ、親しまれている。17日午前、神官の手で神前にササユリで飾られた黒酒(くろき)、白酒(しろき)を入れた酒だるを奉納。さらに4人の巫女(みこ)がユリを手に神楽を舞う。そのかれんでたおやかな姿は、“万葉の乙女”と重なり、美しい。

 普段静かな境内もこの日ばかりはにぎやかで露店も店開き。午後からは稚児行列などがあり、神社から市内目抜き通りを練り歩く。

くろんど池

▲ゆり祭り当日、ササユリで飾られた黒酒、
白酒を入れた酒だるを奉納する神官
(昨年、率川神社で写す)


写真と文 牡丹 賢治

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