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万葉車窓

加茂―笠置(JR関西本線)

山彩る緑のパッチワーク


 サクラの季節を過ぎてから、今年は特に季節が駆け足で通り過ぎていったようだ。山々は今、新緑に覆われ、萌(も)える緑が目にまぶしい。万葉集の雑歌(ぞうか)には季節を詠む歌が数多い。

『 燕(つばめ)来る 時になりぬと 雁(かり)がねは
               本郷(くに)思ひ(しのび)つつ 雲隠(くもがく)り鳴く 』

 ツバメが来るころ、入れ替わりに雁が帰っていく、この鳥の行動を歌に残した。実際には雁が帰ってしばらくしてから、ツバメがやってくるのだが、鳥の行動を楽しんでみていたのだろうか。

 撮影地点は京都府和束町木屋。ここから木津川をはさんで対岸の加茂町山田付近を走行する関西本線の普通列車を写した。木屋の集落の外周を回り込むように山を上っていく京都府道宇治木屋線からの撮影地点。眼下には萌える新緑の緑と、針葉樹の濃い緑色の葉が山に2トーンの模様を描いていた。

 はじめの歌は大伴家持の歌。市原王と家持は天平16年に現在の加茂町にあった恭仁京近くの活道(いくじ)の岡に登り、「活道岡一株(ひともと)の松下の集宴歌」を残している。家持は、

『 たまきはる 命は知らず 松が枝(え)を 結ぶ心は 長くとそ思ふ 』

 と詠んでいる。和束町役場近くに聖武天皇の皇子、安積(あさか)皇子の墓がある。皇子はこの歌が詠まれたころに亡くなっている。「活道の岡」はその皇子の墓の近くだった、ともいわれている。


●参考図書=米田勝著「万葉を行く」(奈良新聞社刊)、和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)


写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)


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