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万葉の景色

穴師の里

雨に煙る幻想の風景

穴師の里

▲田が広がる昔ながらの風情を残す穴師の里、
青垣の山々が雨に煙る(桜井市穴)

 久しぶりに山の辺の道を歩いた。大和国原を眼下に眺め、進む道は四季を通じ趣がある。梅雨最中、日常生活では雨を敬遠しがちだが、青垣の山々が水墨画のようにモノトーンと化す幻想的な風景に心和む。崇神天皇陵から巻向、さらに三輪山にかけ、万葉歌の舞台としてたびたび登場する。雨にちなんだ興味深い問答歌もある。

 『 久方の 雨の降る日を 我が門に 蓑笠着ずて 来る人や誰 』
作者不詳(巻12―3125)

 『 巻向の 穴師の山に 雲居つつ 雨は降れども 濡れつつぞ来し 』
作者不詳(巻12―3126)

 「雨の中、いったい誰かしら。蓑笠も着けず…」ととぼける女性に対し、「何を言ってるんだ。少しの時間でも会いたくて、雨に濡れながらでも来たのに」と迫る男性。何とも艶(つや)っぽいが、親しみがある歌だ。もちろん気心の知った仲だからこその歌だろうが、ほのぼのと心地よい。

 穴師の里は山のふもとに広がり、今も昔ながらの民家を見ることができる。集落に一歩足を踏み入れると、狭い道が曲がりくねり、路地に寄り添うように巻向(穴師)川が流れる。水田脇の畔(あぜ)に白いかれんな花を見つけた。

 思うに万葉にも詠まれた海岸線などに自生する浜木綿(はまゆう)では。取材当日も雨。梅雨らしい梅雨とでも表現するとぴったり、朝からしとしとと雨の降り続く日だったが、花が水滴できらりと輝き、美しさに磨きがかかる。

 町の外れには大神神社、大和神社、石神神社と並ぶ大社の1つ、穴師坐兵主神社も。他の神社と比べ、参拝者は少ないようだがユニークさでは引けを取らない。というのも相撲発祥の地といわれているからだ。初めて天覧相撲が行われたともいう。穴師の里を抜けると車谷。川の流れが早くなってきた。

浜木綿

▲三重や和歌山の海岸線などに自生する浜木綿だろうか。
畔に咲く白い花が人目を引く


写真と文 牡丹 賢治

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