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万葉の景色

真神の原

狼が駆け抜けた故地も雪化粧

▲飛鳥寺も雪化粧した真神の原

 飛鳥に雪が降った。

 『 大口の 真神の原に 降る雪は いたくな降りそ 家もあらなくに 』 舎人娘子(巻8-1636)


 真神は狼(おおかみ)。「大口」は真神にかかる枕詞で、古代の人々は大きな口をもった狼を特に「大口の狼」と呼んだとか。その狼が吠(ほ)え、走りまわった原は今の明日香村、飛鳥寺周辺。

 都が飛鳥から藤原の地に移ってからの歌だろうか。一面雪に覆われ、寒々とした光景を目の当たりにした舎人の娘が、送り出した人が無事だろうかと気遣う。

 心安らぐ歌だ。さて、蘇我馬子が推古4(596)年、およそ9年の歳月をかけ建立したわが国初の本格的な寺院がここ。のちに中大兄皇子と中臣鎌足が蹴鞠(けまり)にことよせ蘇我氏の討滅をはかったところとしても知られる。

 いまや小さなお堂と礎石が残るだけだが、最古といわれる飛鳥大仏は、切れ長の目と面長の顔が印象的でファンも多い。堂の西には大化の改新で殺された蘇我入鹿の首塚も。

 風雪にさらされる五輪塔。以前は野道にポツンと建っていた記憶があるが、辺りが整備されイメージが随分変わった。たとえ暴君であろうと人の死を哀れに思う人がいた。そして、今に息づく。救われる思いだ。

 この地に来るだけでも古代が見えてくる。大規模な石積みや導水管、流水施設などが備わった大庭園が話題になった「飛鳥京跡苑地」もすぐそば。古代ロマンへはせる思いは尽きない。


▲入鹿の首塚と伝えられる五輪塔。
薄っすら雪が積もり、ひっそりとたたずむ
(明日香村飛鳥)


写真と文 牡丹 賢治

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