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万葉の景色

錦の里

清流染める綾錦

▲赤く色づいた葉が風に舞い、落ち葉が清流に
浮かび錦の里を覆う日も近い(奈良市菩提山町)

 紅葉、黄葉の綾錦(あやにしき)に包まれた古社寺の塔や堂宇が浮かぶ大和路。「万葉集」には「もみち」を題材にした歌が137首もある。現在、モミジといえば紅葉が主流だが、万葉の時代は黄葉が主役だったようで歌もその大半が黄葉の文字を使用している。ちなみに赤色を意味する紅とか紅葉の文字を用いた歌は6首、それ以外「色づく」などの表現が数首あるだけだ。

 地名の分かる歌でみると春日山の7首がトップ。続いて竜田川4首、三笠山3首などで大和路が上位を占める。辞書には落葉植物の葉が落ちるに先立って、秋、赤または黄に変わること-などと記されている。世界でも有数のモミジの美しい国だと言われているわが国、とりわけ、県内の名所は「今年は例年になく色づきがつややか」と評判だ。

 奈良市郊外、菩提山の中腹にある正暦寺(菩提山町)は、古くから“錦の里”と呼ばれ親しまれている。談山神社や室生寺、長谷寺…、さらに奈良公園一帯といった華やかさはないが、500メートルほどの参道が綾錦のトンネルと化し、寺の前を流れる菩提寺川には赤く色づいた葉が舞い、清流を染める。


 『 経もなく 緯も定めず 少女らが  織れる黄葉に 霜な降るりそぬ 』  大津皇子(巻8-1512)


 縦糸も横糸も定めず織った黄葉は山の錦。どうか霜よ、その錦に降らないで…。少女は山の仙女。黄葉を彼女らが織った錦にたとえ、時よ止まれ、美しい時を。流れに沿って苔(こけ)むした石垣が続き、心安らぐ。

 山間は朝晩の冷え込みが厳しく、駆け足で冬の装いに。赤や黄色く色づいた葉が風に舞い、落ち葉が清流に浮かぶ日も近い。境内に導く“道案内”のように植えられたナンテンの実も色づき始めた。「難を転ずる」に通じ、縁起のよい木として正月飾りなどにも重宝されている。ビーズを散りばめたように枝先いっぱいの赤い実が色を失った木々に映えることだろう。きょうから、はや師走-。


▲真っ赤に色づいた葉が白い土塀に映える

▲ナンテンの実も色づき、はや冬の装い


写真と文 牡丹 賢治

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