三輪・桧原の春
心安らぐ癒やしの風景
▲夕日であかねに染まる桧原
明日香路(3月17日付)に続く、万葉の花シリーズ。
「山の辺の道」も春の訪れは早く、花が咲き競う。モモの花が青垣の山肌をピンクに染める三輪・桧原(ひばら)の里はとりわけ、美しい。
大神神社の摂社の一つ、桧原神社があり、太いしめ縄の内に木々に囲まれた三ツ鳥居がひっそりたたずむ。
奥は三輪山。西に下り、井原池の堤に立てば春霞に浮かぶ大和三山(畝傍山、耳成山、香久山)を目の当たりに。
そのはるか先に金剛、葛城の山々や二上山、少し離れて生駒の山並みが一望できる。モモの花越し、眼下には卑弥呼の墓説もある箸墓なども見える。背後には裾(すそ)を広げる三輪山が迫り、池に頂が映る。
『 行く川の 過ぎにし人の手折らねば うらぶれ立てり 三輪の檜原は 』
柿本人麿歌集(巻7-1119)
「過ぎにし人」は、この地を通り過ぎた旅びとだろうか。それとも、すでにこの世を去った人だろうか。いずれにしても哀愁がただよい、心にしみる。万葉びとにとっても、この地は聖地だったことが容易に分かる。
今、山の辺は季節を問わず、ハイカーらでにぎわうが、この辺りはコース随一の景観であろう。春の草花を愛(め)で、眺めを楽しむことはもちろんだが、かなた稜(りょう)線に日が沈む夕方、山々が光輝くころは心安らぐ。
写真と文 牡丹 賢治
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