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国原譜

3Dプリンターを使えば仏像もクローンが…

 3Dプリンターを使えば仏像もクローンが造れる時代だが、唐招提寺が安置する鑑真和上坐像のお身代わりは、正反対の手法で制作された。全身に漂う温かさは、人の手が強く加わればこそだろう。

 完成したのは3年前。鑑真和上の1250年忌に合わせて開眼し、国宝の実物に代わって拝観者を迎えている。

 鑑真和上坐像は、講堂の梁(はり)が折れる夢に和上の死期を悟った弟子の忍基が、造ったとされる。お身代わり像の制作を前に美術院が調べたところ、熟練仏師の「仕事」は確認されなかった。

 表面に塗られているのは木屎(こくそ)と呼ばれるペースト状の素材だが、ヘラを使わず、指で丁寧に塗り延ばしていた。独特の柔らかな線はそこから生まれた。

 美術院国宝修理所の担当者が「造形テクニックを度外視したすごさ」と表現したように、指先に宿っていたのは鑑真和上を慕う心だろう。お身代わり像は同じ手法で造られた。

 6月には唐招提寺の開山忌が営まれ、国宝像も開扉される。殺伐とした出来事が相次ぐ今、2体の鑑真和上坐像に菩薩の心を見てはどうだろう。(増)

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