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金曜時評

調整力、成果問う - 編集委員 松井 重宏

 奈良市の火葬場移転計画が、建設候補地の地元から強い反発を受ける中、課題解決に向けた市の体制強化策でも人事案の議会同意が難航、懸案解決に向けた道筋が混迷の度を深めている。

 同市では、ほかにも、ごみ焼却場の移転や道路の拡幅など、市の施策に対して住民が見直しなどを求める動きが相次いでおり、議会に提出された請願は既に6件に達した。その背景には、トップダウンで事業を進める仲川元庸市長の手法に問題があると指摘する声が根強く、同市長の調整能力が改めて問われている。

 また市民生活に欠かせない事業の円滑な推進に向け、今後は議会にも市長批判にとどまらない積極的な関わり、取り組みが求められそうだ。

 同市白毫寺町の火葬場は需要が高く能力いっぱいの稼動が続いているが、施設の老朽化が進んでおり、建て替えは待ったなしの状態。さらに市は費用に合併特例債の活用を見込んでいるため、その有効期限である平成32年度末までの移転完了が条件となっている。ただ地元は、市が移転候補先とした横井町が現在地に近いことに反発。財源問題を理由に期限を切るような市のやり方や、仲川市長が自ら汗をかく対応を見せないことにも不満を募らせている。

 これに対し同市長は「(事業の)遅滞は全ての責任が私にある」とした上で、同問題を市の最重要課題と位置付け「期限内にやり切るのが大前提」と改めて意欲を表明したが、その後も地元合意に向けた具体的な進展は聞かれないまま。空席となっている2人目の副市長に実務に長けた市参与を起用、移転問題の解決へ体制を強化しようとしたものの、6月定例会に提出した人事案は議長が上程を保留する異例の事態に陥った。

 人事案は29日に開かれる次回の議運で上程、採決される可能性もあるが、議会との関係でも仲川市長の調整力不足が露呈した格好。同案の取り下げに追い込まれれば、さらに厳しい状況になる。

 同問題以外でも、奈良公園の猿沢池にアクセスする市道の拡幅事業で、計画の白紙撤回を求める自治会から「地元の声を聞かず、一方的に進めようという今の手法には全員が納得していない」と厳しい批判を浴びた仲川市長。議会答弁で前向き姿勢と努力を強調するばかりでは、事業は進展しない。若さを売りに登場した同市長だが、2期目の折り返し点を控えた今、結果が強く求められている。

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