戦後最低の投票率の中で政権与党が圧勝する総選挙のあった12月。以前本欄でも触れた未来志向の取り組みに目立った動きがあった。

　トヨタ自動車は、世界初の市販の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の発売を開始した。燃料の水素と空気中の酸素の反応で生じた電気で駆動。静かで二酸化炭素も排出しないエコな車は、いつか見た未来世界が手の届く距離になったことを感じさせる。

　環境に優しい車は、守るべき自然、文化財が豊かな奈良のような地にこそふさわしい。一台でも多く県内で走行している姿を見たい。

　宇宙空間の太陽光パネルで発電し、マイクロ波で地上に送電するのが宇宙太陽光発電。SF的なアイデアに未来人の暮らしが垣間見える。

　京都大学などが産官学で地上送電実験を行う計画があるようだ。実用化への一歩に、研究を先導した県出身で同大前総長の松本紘氏も胸躍らせておられるだろう。

　今年日本人が受賞したノーベル賞は、実用面での功績も大きかった。今月がのちのち、総選挙よりも、日常生活を変革した出発点として語られることになるかも知れない。(智)