特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

高齢化を前向きに - 編集委員 山下 栄二

 総務省が発表した平成25年10月1日時点の人口推計によると、65歳以上の高齢者の人口が実に総人口の4人に1人となった。15歳~64歳の生産年齢人口は32年ぶりに8千万人を下回り、高齢化社会対策が大きな国民課題となっている。働き手の減少による現役世代への社会保障費負担増など高齢化社会のマイナス面ばかりが強調されているが、現実を前向きに考えることが必要だ。

 シニア世代に学ぶ機会を提供しようと、県は高校の教科書を使って講義などを行う「県立大学シニアカレッジ」を今月13日に開講、予想を大幅に上回る514人が1期生となった。「若さを保つのは脳のあらゆる領域で刺激が必要」と企画された全国的にも珍しい取り組みだそうだが、幸先のいいスタートを切ったといえる。高い学習意欲を持つ高齢の人が県内に数多いのがうかがえ、いきがいづくりのためにも、地方自治体はこのような生涯学習の場をさらに設けるべきだろう。

 会社をリタイアした人が図書館で読書を楽しむ姿を多く目にするが、単に読むだけではあき足らず自ら本を執筆する人も増えてきている。

 奈良新聞社から2月に発行された「明日香の万葉を歩く(上・下巻)」(日本図書館協会選定図書)の著者である二川暁美さんは、元大手電機メーカーの取締役で工学博士。「明日香の万葉」は、理科系の二川さんならではの緻密な構成の散策ガイドブックになっている。現役時代は忙しかった人も引退後は、じっくりと創作に取り組むことができるのではないか。豊富な人生経験を生かして読みごたえのある本を出版できる人材も多いと思われる。

 社会のためになることで、いきがいを感じる人たちが様々なボランティア活動を行っている。県あげての大きな行事となった12月の奈良マラソンの運営は、高齢のスタッフが、なくてはならない大きな役割を担っている。子どもたちの安全を見守る地域のパトロール隊や、法隆寺、平城宮跡などで観光客らを案内するガイドとして活躍する高齢者も目立っている。このようなシニアパワーを大いに活用すべきだ。

 世界有数の長寿国である日本では65歳を超えたといえども、まだまだ元気いっぱい。地域の“ご意見番”や「おばあちゃんの知恵」などとして高齢者の力を尊重してきた日本の伝統もある。プラス思考で高齢化社会にのぞまねばならない。

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