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金曜時評

争点の明確化示せ - 編集委員 松井 重宏

 名乗りを挙げた候補予定者が計7人。任期満了に伴う奈良市長選挙は7月14日の告示まで、あと1カ月に迫った。一時は「事前調整で出馬を見合わせる陣営も出てくる」などの予想も聞かれたが、今もなお、競争率7倍に達する混戦の構図に変化は見られない。この状況をどう読み解き、何を選択の基準に据えるのか。支持を訴える側と判断する側、双方にとって難しい選挙になりそうだ。

 もちろん候補者が多いこと自体は悪い話ではない。特に同市長選で出馬を表明した7人の顔触れを見ると多士済々。現職市長をはじめ元衆院議員、現職県議、現・元市議ら実績のある人材がそろっており、昨年12月の衆院選に出馬、敗れた候補も含め、全員が同市で過去に何らかの選挙を闘った経験を持つ。それだけに各候補予定者が掲げる選挙公約は実現性も含め、一定以上のレベルが期待できそうだが、逆に似たような政策が並び、結果として明確な違いが分かり難くなる懸念もぬぐえない。

 政治の現状に対する批判や不満が強ければ強いほど、改革や交代を求める勢力が台頭してくるのは当然だが、今回、奈良市では新旧の対立軸に沿った形で候補者の絞り込みが行われず、乱立気味とも思える状況に至った。4年前の市長選で新人を当選に押し上げた民主党が国政野党に転落、次期参院選も含め県内では事実上の“機能停止”に陥ってしまったこと。また自民党も市長選の候補づくりでは後手に回り、その間に「第3極志向」の勢力が先行、保守層が分裂したこと。これに共産党の推薦を受ける候補予定者、やや遅れ気味に出馬を表明した現職も加わって、選挙の構図は、どんどん有権者の視界から遠ざかっていっている。

 候補予定者や党派の思惑、政治的野心が前面に出てくれば有権者は嫌気する。選挙運動は告示日の後からだが、各陣営には市政の課題や争点の整理を早目に進め、分かりやすい形で示してほしいものだ。

 最近の奈良市政では、公共の利益と特定地域の負担の兼ね合い、いわゆる迷惑施設の問題が表面化。また庁内では職員の不祥事が相次いで発覚しており、市政トップの指導力や信頼感が重要度を増している。選挙で政治家としての資質や人柄を問うのは難しいが、有権者は公約の比較とともに、望ましい市長像とは何かを考え、選択肢を絞ることも必要になりそうだ。

 隣接する大和郡山市では今まさに市長選挙の真っ最中。ただ、こちらは現職と新人の計3人による争いで奈良市とは人数が違う。人口約36万5000人。県都のトップを決める選挙は、県民みんなの関心事だ。このまま7人が出馬すれば過去最多。これが懐かしの映画「七人の侍」なら、初めは多少反目しても最後は住民のために協力しあうところだが、市長選では激突するしかない。ただ住民をおざなりにした政争は断じて許されない。

 

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