特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

全議員に語る責任 - 編集委員 水村 勤

 奈良市議会の昨年6月の議長選工作事件解明について、当事者である議会の動きは止まったままであると言わざるを得ない。議員諸氏はそのことにどれだけ責任を感じているのだろうか。贈賄申し込みの容疑で既に大阪地検特捜部によって逮捕者まで出している。調査もせず事態を放置していると見られても仕方のない現状は、“言論の府”として議会の姿勢が許されるものではないことは明らかである。

確かに、金品や議会ポストを材料に議長選工作の“舞台回し”を行ったのは、逮捕された前議長の山本清容疑者ら政翔会関係者が中心だった疑いは濃い。その意味で議長選工作を受けた実態の一端を暴露した無所属の天野秀治、酒井孝江両市議の勇気を改めて評価しておきたい。

 しかしながらである。他の議員諸氏はどうしたことであろう。これまで真相実態に迫るべく、地方自治法による百条委員会の設置や、そこまではいかないにしても独自の調査委員会を設置して議長選工作を検証しようと、議員諸氏がひたむきな努力をなしているとは、とてもいいがたい。

 この事件は、市議会全体に“泥”を塗る大汚点である。泥は洗い落とさず放置すれば、そのまま悪臭そのものになる。しかも、その臭いがなじめば、次第に自分自身も臭いにまひしてしまう。「捜査中だから静観する」などとだんまりを決め込むことは、悪臭を抱えこむことと同様と思うが、いかがなものか。

 一人でもできることはある。あの議長選で知り得た事実をまず、市民に公表することだ。次に検証しようとする議員諸氏と連携することである。議会の浄化は、美辞麗句を並べ立てたり、問題の核心を棚上げにして改革を語ることではない。調査・検証が出発点なのである。

 渦中の人の一人、政翔会幹事長の浅川仁氏はかつて、保守系新会派が誕生した平成16年3月、「しがらみの多い会派の中では限界があると感じていた。新人議員ももっと発言しなければと思うようになった」と本紙記者に語っている。今もそう思っているのか。“雲隠れ”が続いていて確認できないのは残念なことである。ちなみに当時の会派は「青翔会」で「政翔会」ではなかった。

 さて、「地方の時代」とか「地域主権の時代」と言われながら、地方自治の進展が進まない。その責任の大半は中央の政治・行政の改革が思わしくなく、既成政党への失望の大きいことは数多く論じられてきているところである。しかし、地方は着実に身を切る改革を進めながら、地域経営の実を挙げているのかというと、心もとない。

 私たちの愛する県都・奈良の市政は、その発信力を失っていないのか。議会のモラルハザードはリーダーシップの欠如につながり、市政停滞へと、さらに悪影響することにつながらないのか。

 是は是、非は非。断固、発言せよ。

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