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金曜時評

独自性こそ新戦略 - 論説委員 小久保 忠弘

 奈良を除く2府5県でつくる関西広域連合の知事らが20日から訪中し、経済成長著しい中国の観光客を呼び込もうとプロモーション活動をしている。昨年12月に広域連合が発足して以来、まとまって観光PRに乗り出すのは初めて。23日まで北京と上海で観光セミナーなどを開催し、中国副首相ら政府要人とも会談したという。

荒井正吾知事が「屋上屋を架す」として参加していない関西広域連合だから、奈良の分までPRしてくれるとは思えないが、日本の歴史文化を語る上で欠かすことのできない奈良県を抜きに、外国で関西の広域観光を訴えるのは難しいだろう。

 観光行政は点から線、さらに面へと広がるべきだが、知名度など個々の商品性に左右されるのも事実。2府5県といっても観光面での「売り」はさまざまだ。地域特性が違えば戦略も変わる。何よりも各府県の経済力に差があるなかでは、受け入れの分担も公平にはいかない。オール関西での誘致といっても、お客さんはどこにも均等に来てくれるわけではない。

 同じ20日には、石川県知事ら中部圏9県の自治体や観光事業の関係者が上海を訪問、同市内でセミナーを開き「観光で日本を元気にさせてほしい」と訴えたという。訪問団には中部圏知事会議を構成する富山、石川、福井、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀の観光事業関係者が参加している。競争相手は国内にもたくさんいるようだ。

 一方、県は先ごろ日中韓3カ国の地方政府の推薦を受けた若手職員を対象に「東アジア・サマースクール」を開催した。「塾長」の荒井知事は開校式で、グローバル化する世界を相手に、東アジアの歴史や文化、社会事情など共通の認識と高い見識を持つ人材を育成する重要性を訴えた。知事は「奈良は中国大陸や朝鮮半島からいただいたものを大切にしてきた。そうした歴史に感謝し万分の1でもお返しができたら」と意義を説明している。

 「お金を落としに来てくれ」と即時的に叫ぶ前に、長い目で人材育成や交流の芽をはぐくむ取り組みは評価されていい。グローバル化の中では独自性が必要だ。

 今や業界も自治体も、お金持ちの中国が一番のターゲットらしい。そこへ草木もなびくように「来てください」の大合唱で押し寄せるのも分からないではないが、国情が違い民族的性格の強烈な相手に、全てをシフトするのは安全保障面でいかがなものか。

 大震災による被災者の身の上を思うと夏休みの旅行も気分が乗らないという声が多い。一方、東北の観光地や福島原発の影響下にある地域では、従来通りの訪問を望んでいる。外国人観光客の減少は県内も例外ではないが、被災地の惨状とは比べものにならない。この際、外国人に頼まず余力のある県民は東北方面へ旅行しよう。修学旅行で古都を潤してくれた人たちに恩返しする絶好の機会だ。

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