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金曜時評

議会の能力向上を - 編集委員 松井 重宏

 県議会の定例会が明治21年1月の初開催以来、300回の節目を迎え、30日に東大寺の大仏殿西回廊で記念行事と11月定例会の本会議を開催する。まだ議場が整備されていなかったため同回廊を利用して開かれた第1回定例会を再現する試み。当日は傍聴も受け付けており、念願だった大阪府からの独立を果たした奈良県が、新たな第一歩を踏み出した当時の苦労、熱意を考える場になりそうだ。

 また今回の定例会はイベントとしての側面だけでなく、県議会基本条例案の提出、可決が予定されており、議会改革の上でも大きな節目となる。同案は基本条例のため具体性に欠ける部分や法律との重複もあるが、地方分権の担い手として議会の機能強化を目指す姿勢を明示しており、実質的な取り組みに結びついていくことが期待される。

 もちろん大阪府の橋下知事が提案する「議会内閣制」にまで踏み込んだ改革とは本質的に異なるが、現状の法の枠組みの中で何ができ、何をするべきか、議員と有権者の意識を高め、行動に移すことが先決だろう。そのためには議会の組織、制度改革はもちろん、政党会派の充実を進めることも不可欠。特に国政レベルで55年体制が崩壊した現在、地方議会でも保守系議員の再編が動き出しており、2大政党を自認する民主、自民両党には地方組織の立て直しが強く求められる。

 従来の議員個人による口利きから脱し、組織的な対応として有権者から意見を吸い上げ、行政に生かしていく透明性のある仕組みづくり。また議会改革の中でも指摘されている会派内、会派間での議論に耐えうる政策づくり。それらを担う力を政党の地方組織は持たなければならない。

 まだ党歴の浅い、いわば“新参”の滝実衆院議員を会長に据えた民主党県連。現職議員を差し置いて異例の“浪人”起用で誕生した自民党県連の奥野信亮会長。ともに組織内の対立を避け、来春の統一地方選に向けた挙党体制を優先した結果とも見えるが、指導力の点では不安ものぞく。

 選挙対策の場当たり的な公約ではない、しっかりした中長期展望を示す能力をどう育てていくのか。政策提言で実績をアピールする公明党や共産党、社民党も加わり、県議会の場で各会派が正面から議論を戦わせる機会が増えれば、互いに切磋琢磨(せっさたくま)していけるに違いない。

 分権の推進では、動きの鈍い国に対して不満をためてきた全国47都道府県が、計23項目にわたる構造改革特区を一斉提案する“実力行使”に打って出るなど、首長らが積極的に活動。その一方で、地方議会の存在意義が問われる場面も出て来ている。

 定例会300回の歴史を踏まえ、基本条例の制定に至った県議会。知事とともに県政を担う「二元代表制」の有用性を示し、政党の地方組織を通じて基礎自治体の市町村と国を結ぶ役割を強めるよう、期待したい。

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