国原譜

来年の平城遷都1300年祭に合わせて、奈良…

 来年の平城遷都1300年祭に合わせて、奈良や京都の文化財を戦争の被害から守った恩人の業績を顕彰する取り組みが進められているという。

 よく知られるアメリカ人のラングドン・ウォーナー博士のことではなく、中国人建築家の梁思成さん。その活動内容などは本日付の記事に詳しい。

 多くの人命が奪われた戦争。前線はもちろん、銃後でも空襲により戦禍が広がった。そんな中で歴史遺産だけが守られても違和感が残るが、文化を尊ぶ心はきっと反戦平和の実現につながる。

 法隆寺長老の高田良信師によると「ウォーナー博士恩人説」は本人も否定していたと言い、梁さんが奈良空襲を防いだ確証もないのかもしれない。

 ただ記事にもある通り、奈良の文化財が焼けずに残った意義は大きい。戦争相手国の中に失われなかった良識。かつて再三にわたって兵火を受けてきた奈良の歴史は、繰り返されずに済んだ。

 戦後に正倉院展を訪れた井上靖さんは、伝来の宝物が敗戦荒亡の「この国の人々のこころに安らぎを与える」と詩に詠んだ。そんな文化の力を、今後も守り継いでいきたい。(松)

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