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歴史文化

質問「歴史ある文化財、自然災害からどう守っていく?」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2024年3月20日)

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【質問】

 近年、地震や水害が多くなり、自然災害の恐ろしさを実感しています。奈良でも大災害が起こったらどうなるのかと不安になります。その一方で、歴史ある文化財はこれまで大きな被害を受けずに残されているものが多いとも感じます。何百年もの間、どのように守られてきたのでしょうか。(50代女性)

 

 

 辻 明俊(興福寺執事長)

 

 

我知なヒント=科学と宗教が手を取り合う】

 

 

 興福寺の伽藍(がらん)は平城京を一望できる高台に造営が計画されました。創建者である藤原不比等はこの地を「勝区(しょうく)」とたたえ、眺望・地盤・水はけに優れた土地と伝えています。度重なる火災で残念ながら創建期の建物は現存しませんが、1300年の歴史の中で、水害や地震による被害はほとんどありません。

 

 瓦を打ち叩く激しい雨が降って、水たまりがそこかしこにできても、雨が止むとあっという間に地面に染み込みます。阪神大震災や大阪北部地震でも伽藍は無事でした。

 

 しかし「数十年に一度の大雨」という言葉を頻繁に聞くようになりました。「恵みの雨」も、度を越せば「困った雨」となり、ここ数年の記録的豪雨は日本各地に深い傷跡を残しています。また、能登地方を震源とする元日の大地震は、厳かな正月の空気を一変させました。

 

 遠く離れた場所で生じた天災であっても、大地や空、海は広く、どこまでもつながっています。昨日、はるかかなたで起こっていたことが、今日はその只中にある、そういう可能性は誰にでもあり、自分だけが安全などという保障と約束はないでしょう。

 

 歴史に「もし」はなく、先々異常気象の発生が増えれば、経験のない天変地異に直面するかもしれません。興福寺でも防災設備の点検や対策を施し、いっそう気を引き締めていかねばと思っています。

 

 さて、五重塔の令和大修理では、近年頻発する自然災害も頭に入れ、耐震診断はもちろん、大型台風を想定しての風荷重調査などを実施しました。そうして得られたデータには、驚きと新たな発見がありました。その報告はもう少し先になりそうですが、得られたデータを基にして、弱点を念頭に置き、文化財という概念にとらわれない議論、大胆な補強や対応を検討する必要がありそうです。

 

 一円の歴史から学び、科学と宗教が手を取り合う五重塔大修理が、未来へのメッセージとなることを願っています。

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