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春日大社「五大龍神めぐり」を体験 - 1月11日開始

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春日大社・五大龍神巡りのひとつ金龍神社

 今年の干支(えと)の辰(たつ)にちなみ、奈良市春日野町の春日大社で春日山の龍神信仰をたどる「五大龍神めぐり」が11日から開始されます。春日山は平城京の水源地とされた場所でした。

 

 人々の命を守る水源地に鎮座する水の神・春日龍神は天へ昇り、黒雲をつくって雨を降らせたと伝わります。春日の龍神信仰は中世から盛んになり、室町時代には能の大成者、世阿弥が演目「春日龍神」を創作しています。春日大社では雨乞いのとりでとして人々の祈りが捧げられていたとみられます。

 

 かつて猿沢池にすまわれたという龍神、善女龍王は春日大社の宮に入る前、頭を北にして一の鳥居で休憩をしていたとか。

 

 鳥居に龍の尾が垂れ下がると、榊(さかき)が邪魔になって龍が嫌がるので南側の榊が取り外されたのだそうです。現在でも春日大社の一の鳥居には、龍神に配慮して榊が片方にしかありません。古くから伝わる信仰がうかがえます。

南側の榊が外された一の鳥居

 

 「五大龍神めぐり」は、境内に祭られた五つの龍神社を祈願符を持って巡拝すると、最後に祈願の証の印と御朱印が授与されます。春日大社にまつわる龍神の社を巡って、辰年の御利益をいただきましょう。

 

 まずは、夫婦大国社受付で申し込みを行い、祈願札を受け取ってお願い事と氏名を記入してから巡拝を始めます。初穂料は1回1200円で所要時間は45分ほどです。

五大龍神めぐり祈願符

 

それでは1番から五つの社を巡っていきましょう。

 

 

①金龍神社

金龍神社

 

 1番の社は、受付の夫婦大国社近くの金龍神社です。祭神は金龍大神で寄進の赤い旗がたくさん立てられています。

 

 金龍神社は、南北朝時代に後醍醐天皇が京都の笠置山潜幸の途中に訪れ、御所で保管されていた鏡を託して天下泰平を祈願されたのが起源とされています。御所の鏡を託されたことから、宮中の名称「禁裏(きんり)」を用いて「禁裏殿」とも呼ばれていました。そこから天皇や皇帝を表していた龍と結びつき「金龍神社」となったのかもしれません。

 

 金運をもたらす神として多くの投資家が祈願に訪れる場所でもあります。12年に1度の辰年に寄せて阿吽(あうん)の金色の龍像が崇敬者から寄進され、境内はより華やかになりました。

後醍醐天皇の史蹟も建立されています
阿吽の金龍像 右側
阿吽の金龍像 左側

 

②龍王珠石

龍王珠石

 

 2番は、「龍王珠石」です。

 善女龍王の尾の玉と伝わる「龍王珠石」を祭る場所です。祭神は善女龍王。摂社の紀伊神社の横にあります。積まれた石に参拝します。

 

 善女龍王は八台龍王の一尊、沙掲羅龍王(しゃかつらりゅうおう)の三女です。強い霊力を持つ龍王の尾玉は、春日大社の本殿下に埋められていると伝わっていました。江戸時代の「奈良名所絵巻」にも「龍王珠石」が記されており、当時から参拝者が訪れて祈りをささげていたことがわかります。

 

 「龍王珠石」の向かいには伊勢神宮への遥拝所があります。石と石の間の方角に伊勢神宮があるそうです。中世から三笠山周辺では石に対する信仰が深かったと考えられます。

丸い石が祭られています
伊勢神宮遥拝所

 

③鳴雷(なるかみ)神社(香山龍王社)遥拝所

春日山に向かって参拝する鳴雷神社の遥拝所
春日山中にある鳴雷神社=春日大社提供

 

 3番目の社は、天水分神(春日龍神)を祭る鳴雷神社の遥拝所です。春日山の水源地に鎮座する鳴雷神社は春日山中にある禁足地のため遥拝所から参拝します。平城京の命の源の水源地として祭られ、平安遷都された後も宮中の水神として大切に守られてきました。

 

 鳴雷神社の社殿から続く階段の下には龍王池があり、神様が階段を下って池に入り春日龍神へと化身したと伝わっています。池の水は枯れることがなく、雨乞いの聖地として香山龍王社または高山龍王社とも呼ばれていました。

 

 取材中、写真を撮っていると鳥居の中に鹿が現れました。神鹿が姿を見せてくださったかもしれません。とても神聖な気持ちになりました。

 

④八雷大神

八雷神社

 

 4番の社は八雷大神(八大龍王)を祭る八雷神社。本殿の鬼門を守る雷と黒雲を操る神のため、電気関係の会社からの崇敬が篤く信仰されています。

 

 御簾が掛かった四角い窓は龍神さまの通り道とも言われています。御殿を自由に出入りして人々の願いをかなえてきたといいます。通常の参拝は内侍門からになりますが、ご本殿特別参拝(初穂料500円)をすると、上記写真の場所まで行って近くで参拝することができます。

八雷神社・参拝所の内侍門

 

⑤龍王社

龍王大神を祭る龍王社

 

 最後の社は龍王大神を祭る龍王社。春日大社創建1250年を記念して社が再興されました。

 

 現在の祈祷所は、神仏習合の時代に興福寺の安居屋(興福寺の高僧が国家安泰を祈った重要な場所)があった場所だとされます。かつては安居屋の神様と、春日山山中の香山龍王社の里宮として龍王社が鎮座していたといいます。

 

 5社を巡り終えたら、御祈祷所で祈願符に祈願の証の印を押してもらえます。さらに五大龍神めぐりの御朱印が授与されます。

五大龍神めぐりの御朱印

 

 春日大社は「人々の運気を押し上げる春日龍神の社を回って幸運を授かってもらえれば」としています。

 

 春日大社には、知られていない多くの社があります。龍神めぐりを通して境内を歩いていると、たくさんの発見があると思います。春日山の神秘的な空気を感じながら参拝でき、清々しい気持ちになります。ぜひ体感してみてください。

 

2024年1月11日から原則毎日受付。夫婦大国社受付で申し込み祈願札を受け取って巡拝する。時間は午前9時〜午後3時。初穂料は1回1200円で所要時間は約45分。問い合わせは春日大社、電話0742(22)7788。

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