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逢香の華やぐ大和 丹生川上神社下社(奈良県下市町)

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丹生川上神社下社(奈良県下市町)を訪ねて

水神を祭る最古の社 神馬2頭、境内かっぽ

 書家の逢香さんが県内の神社仏閣などを巡り、季節や土地の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は奈良県下市町の丹生川上(にうかわかみ)神社下社です。 (高橋智子)

 

丹生川上神社下社にやってきた逢香さん=いずれも8日、下市町

 

 

水神の聖地へ

 セミや鳥の声、清流丹生(にう)川を抜ける風、山の木々に抱かれ、自然と一体化したような本殿。逢香さんは荘厳な社の鳥居に一礼し、境内で珍しいものを見つけた。

 

 「かわいい! お馬さん」

 

 柵の中にいたのは、穏やかな表情でのんびりと過ごす黒馬と白馬の2頭。「黒龍」と「白龍」だ。逢香さんの声に反応し、白龍がゆっくりと歩み寄った。

 

黒と白の神馬。「黒龍」と「白龍」

 

 

神馬・絵馬発祥の地

 丹生川上神社は神馬(しんめ)と絵馬発祥の地。日本で初めて馬を飼い、雨乞いのために黒馬、晴れ乞いのために白馬を奉納する習わしがあったと伝わる。

 

 同社は675年に天武天皇が創建。水神を祭る最古の社で、もともと一つだった広大な社は明治から大正時代にかけて上社・中社・下社の3社に分かれた。

 

古い大きな絵馬

 

 

拝殿へ

 「ここは都から真南の方角、十二支の午(うま)の方角にあるんです」と禰宜(ねぎ)の佐藤貴子さん(49)。さらに真北の日本海に浮かぶ御神島からも一直線上にあると聞き、「全部つながっているんですね…」と逢香さんは深くうなずいた。

 

 拝殿には高さ1メートル、横幅2メートルほどの古い絵馬(江戸期と推定)が飾られ、神の鎮まる丹生山頂の本殿へと木製75段の階(きざはし)が続く。1年に1度、6月1日の例祭の日だけ、特別に階を登り、本殿を間近で参拝することが許されるという。

 

 逢香さんは階の前に静かに座り、手を合わせた。

 

本殿へ続く階

 

 

乗馬に挑戦

 「せっかくなので白龍に乗ってみますか?」

 

 乗馬大会にも出場経験のある皆見元久・宮司(61)のサポートを受け、逢香さんは白龍にまたがった。最初はバランスを保つのに必死だった逢香さん。徐々に慣れると目線は前を向き、「気持ちいい!」と笑顔で手を振った。

 

乗馬に挑戦

 

 

 午後5時、黒龍が自分でバーを開け、2頭は柵を飛び越えて境内の小屋へ。神社では日常の光景といい、「時間が分かるんですよ」と目を細める皆見宮司。2頭が仲良く小屋へ戻る様子は、同社のSNSで見ることができる。

 

 

丹生川沿いで華やぐ

 続いて逢香さんは、丹生川沿いの森林公園やすらぎ村へ。夕暮れ時、華やかな浴衣に着替えた。

 

 「花火で遊びたいと思います!」。夏は個展で忙しかったという逢香さん。手持ち花火で童心に返り、笑顔をはじけさせた。「きれい! 華やぎますね~」

 

 川のせせらぎとスズムシの音が聞こえ、山はもう秋の気配。「この夏もたくさん華やぎました…」。じりじりと火花を散らす線香花火に見とれ、遅めの夏休みを満喫した。

 

浴衣姿で手持ち花火を楽しむ逢香さん

 

丹生川沿いにある森林公園やすらぎ村

 

 

人形でお祓い “身代わり” 水に流す

 丹生川上神社下社には、少し変わったお祓(はら)いがある。

 

 紙製の人形(ひとがた)の左肩、右肩、左肩を順になで、次に自分の気になる所と同じ部分をなで、最後に人形の真ん中に息を吹きかける。それを水が流れる境内の岩に流すと、身代わりになって悪い気から守ってくれるという。

 

 書家の逢香さんは「私はよく右手を使うので」と人形の手をなで、息を吹きかけた。水に浮かべると、途中から消えて見えなくなり…。「あれ、どこ行った? 溶けましたね! これで右手が清まったかな?」と笑顔。人形のお祓いは1回100円。

 

 

 

人形(ひとがた)でお祓い。息をふきかけ、水に流す

 

 

逢香の目

作品を手にする逢香さん

 

 絵馬発祥の地、丹生川上神社で神馬と触れ合い、丹生川沿いの花火で夏を堪能した逢香さん。レトロなデザインで白馬と黒馬を描き、「神馬&絵馬 浴衣&花火」と揮毫した。

 

 「絵馬風に描いてみました。今回特別に白龍に乗せていただき楽しかったですね。浴衣姿で花火もできて、いい夏の思い出になりました」と華やいだ一日を振り返った。

 

 

メモ

◆丹生川上神社下社

 下市町長谷1の1。近鉄下市口駅から洞川温泉または中庵住行きバス「長谷」下車すぐ。拝観は午前9時~午後5時。入場無料。駐車場あり。電話0747(58)0823。

 

◆森林公園やすらぎ村

 下市町西山550。営業は4~11月、受け付けは午前9時~午後4時。入村料は高校生以上500円、子ども250円。宿泊は定員4人1泊8700円~。マッシュルームキャビンとバンガローは1棟6300円、キャンプはテント1張り2600円。駐車代別。水・木曜休業。電話0747(58)0114。

 

◆書家/逢香(おうか) 

 奈良市在住。奈良市観光大使。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学で変体仮名の授業をきっかけに個性豊かな妖怪たちに興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。11月20日午後1時から「奈良県みんなでたのしむ大芸術祭(みん芸)」で、世界遺産・金峯山寺を舞台に書道パフォーマンスを予定。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で9月12日に放送。

 

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