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逢香の華やぐ大和 天河大弁財天社(奈良県天川村)

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天河大弁財天社(奈良県天川村)を訪ねて

風、音、味、五感で満喫 芸事の上達を祈願 

 書家の逢香さんが県内の神社仏閣などを巡り、土地の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は奈良県天川村の天河大弁財天社です。(高橋智子)

 

 

神秘の力満ちる境内

 「わ~素敵な場所ですね…」。天河大弁財天社(通称・天河神社)の鳥居を抜け、境内を見回した逢香さんは安らいだ表情を浮かべた。初夏の日差しを和らげる巨大なウスズミザクラの古木、山間を吹き抜ける風、手水舎の水のせせらぎ、鳥のさえずり…。逢香さんは境内に満ちる自然の力に包まれた。

 

神殿へと続く石段=6月27日、天川村

 

 

なぜ芸能の神様か

 書家として「芸事の神様を祭る天河神社にぜひ来たかった」と話す逢香さん。柿坂匡孝宮司(55)から芸能の神様となったゆえんを聞いた。

 

 天河神社が祭る市杵島姫命(いちきしまひめのみこと、弁財天)は水の神様。水のせせらぎ、さざ波の音が派生して音の神様に。音が鳴ると人は自然と体が動くことから、舞など芸能の神様になったという。神楽殿には、舞を奉納する吉野ヒノキ造りの能舞台がある。

 

 「しっかりお参りしたいと思います!」。逢香さんは芸の上達を祈願し、弁財天から神秘の力を授かった。

 

天河神社の能舞台=同

 

 

清流天ノ川

 天川村では5月からアユ漁を解禁。天ノ川(てんのかわ)で釣り人を発見し、興味を持った逢香さん。「友鮎(ともあゆ)」と書いた看板に目が留まった。

 

 「友鮎」とは「アユの友釣りをするためのおとりアユのことです」。答えてくれたコテージやまとや(天川村)の主人、上西修一郎さん(59)に、友釣りの仕組みを教わった。

 

 友釣りは、仕掛け針を仕込んだ元気なおとりアユを釣り糸の先で泳がせる。自分の縄張りに入られたアユがおとりアユを攻撃しようと近づくと、おとりアユに仕込まれた掛け針に引っかかる。

 

 おとりアユは、釣り糸から離れないよう、鼻に遊動式の鼻カン、尻ビレの後部に逆針(さかばり)を掛ける。

 

 

~おとりアユの「友鮎」~

 (1)鼻カンを通す

 

 

 (2)尻ビレの付け根に逆針を掛ける

 

 (3)尻ビレから掛け針をたらし完成!

 

 

天ノ川で友釣り体験

 水の透明度が高く、泳ぐアユが見える天ノ川。「私もやってみようかな?」。逢香さんも友釣りに挑戦した。

 

 友釣りのコツは、さおを動かさずにアユを泳がせること。アユ釣り名人でもある上西さんからアドバイスを受け、逢香さんは真剣そのもの。

 

アユの友釣りに挑戦=6月27日、天川村の天ノ川

 

 おとりアユはさおで投げ込まず、川辺から自由に泳がせる。そのため「おとりアユは元気なことが大事」と上西さん。8・5メートルの釣りざおを持つ逢香さんの釣り姿に、「そうそう上手。様になってる」と声をかけた。

 

 川辺に立つこと50分。一度はアユが引っかかったものの、途中で逃がしてしまった。「惜しかったですね~」。悔しさをにじませながらも、逢香さんの表情は晴れやかだ。「水がきれいで涼し気な気持ちになりました。華やぐわ~」

 

 

焼きアユのお味は?

 せっかくなので「やまとや」で新鮮な焼きアユを試食。生きアユに金串を通し、ヒレに塩を付け、炭火で皮をパリッと焼く。しばらくすると、魚を焼く甘い香りが漂ってきた。

 

 「いただきます」と背中から一口。「!」頬張った瞬間、逢香さんは目を丸くして口元を緩ませた。「フワッフワです!」「お腹も皮も全部おいしいです」。天川村を五感で満喫した一日だった。

 

焼きアユのおいしさに目を丸くした=6月27日、天川村のコテージやまとや

 

 ※取材は6月27日。天候、気候などで景観が変化することがある。

 

 

五十の神々を内包

 天河神社の神殿で、逢香さんは不思議な形の鈴に気づいた。

 

 三つの丸い鈴が一つの輪でつながる「五十鈴(いすず)」は、五十の神を内包するという。天照大御神が隠れた天岩屋戸の前で、舞を舞った天宇受売命(あめのうずめのみこと)が使用した「神代鈴」と同様のものと伝わる。

 

 五十鈴に続く縄を円を描くように回すと、独特の音が鳴る。その響きを聞くと魂が調和し、本来あるべき状態に戻るという。

 

 天河神社の五十鈴は金銀2種が上下に重なる。2種あるのは胎蔵界と金剛界、陰と陽を表し、「天河神社はそれらの中間でゼロの起点に位置することを表している」と柿坂宮司は説明する。

 

天河神社の五十鈴(中央上)

 

 

逢香の目

 

逢香さんの作品。天ノ川のアユが英語で「How are you?」と問いかける。

 

 旅を通して、天川の歴史や自然に触れた逢香さん。七夕をイメージして金銀の箔(はく)を振った料紙を使い、水墨画で天ノ川を泳ぐアユを描いた。書いた言葉は英語で「How are you?」。

 

 お気づきの人もいるだろうか。アユと「are you」を掛けている。逢香さんは「天川で自然豊かな環境と、芸事の神様にお会いすることができて、『調子はどう?』と問われているような印象を受けました」と説明した。

 

 アユに詳しい上西さんも絵を絶賛。体の黄色は天然アユの特徴といい、怒るとヒレまで黄色くなるという。

 

 

メモ

 

◆天河大弁財天社(天河神社)

 天川村107。近鉄下市口駅からタクシーで約40分。バスは同駅から中庵住(なかいおずみ)行き約1時間、「天河大弁財天社」下車すぐ。または「天川川合」下車、徒歩約30分。社務所の受付は午前7時~午後5時。無料。駐車場あり。電話:0747(63)0558

 

◆コテージやまとや

 天川村和田486の2。日帰りでも利用できるバーベキューハウスでは焼きアユ丼、アユ天丼各1100円(税込み、以下同)、アユ塩焼き600円~が楽しめる。天ノ川まで徒歩約3分。釣りは1日入漁券3500円。年間入漁券1万2000円。いずれも女性、80歳以上は半額。宿泊はテントサイト1区画7000円(駐車込み、午後1時~翌午前11時)。コテージ1棟4万4000円(定員12人、午後2時~翌午前10時)。電話:090(9619)7090

 

◆書家/逢香(おうか)

 奈良市在住。奈良市観光大使。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学で変体仮名の授業をきっかけに個性豊かな妖怪たちに興味を持ち「妖怪書家」としても活動。7月16日から奈良市美術館で作品展「妖怪POP」を開催。8月21日まで。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で7月4日に放送。

 

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