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対談・大切な肝臓を守るために - なるほど肝炎!@奈良マラソン特別編

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血液検査の受検率向上で、肝臓病の拡大防止へ

 ウイルス性肝炎、とりわけB型、C型肝炎は血液を通じて感染し、感染すると慢性の肝臓病を引き起こす原因になる。肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、感染しても症状が出ないのが特徴だ。肝炎ウイルスに感染しているかどうかは血液検査で分かるが、無症状のためにその受検率は低い。とりわけ奈良県は全国47都道府県のうち41位と低く、この状況が劇的に改善される見通しは立っていない。奈良県では受検率向上のためにさまざまな施策に取り組んでいるが、どうすればウイルス肝炎検査の受検率を高め、早期発見・早期治療によって肝臓病の拡大を防ぐことができるのか。肝炎検査受検率向上に尽力している肝臓病の専門医・奈良県立医科大学教授の吉治仁志氏と、かつて肝がん死亡率ワーストワンだった佐賀県で県民に受検啓発PRの番組制作に携わり、NHK奈良放送局で「ならナビ」リポーターを務める田中愛理さんにお話をうかがった。

 

奈良県立医科大学教授 吉治仁志氏

 

NHK奈良放送局リポーター 田中愛理(えり)さん

 

 

肝臓疾患が進行すると肝臓がんに悪化

 ――ウイルス性肝炎とはどのような病気ですか。

 

 吉治 肝臓は栄養分の生成や貯蔵、血液中の薬物や毒物などの代謝や解毒、胆汁の生成、体内に入ってきたウイルスや細菌による感染の防御などのさまざまな働きをしている重要な臓器です。

 

 ウイルス性肝炎はA、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスによって起こる肝臓疾患です。B型、C型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染し、肝炎になると肝臓の細胞が破壊され、その働きが次第に低下していきます。進行すると肝硬変から肝臓がんにまで悪化していきます。肝炎になると、一部の患者さんでは倦怠(けんたい)感、食欲不振、吐き気、皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)などの症状が出ることがありますが、全く症状が出ないケースも多いです。

 

 

 

血液検査のみで手軽に判別可能

 ――肝炎ウイルスにかかっているかどうかはどうすれば分かりますか。

 

 吉治 肝炎ウイルスにかかっているかどうかは、血液検査で分かります。かかりつけの医療機関で血液検査を受ける際に「肝炎の検査もお願いします」と言って検査項目を追加していただくだけで、特別な検査はありません。

 

 肝炎ウイルスのキャリアでは、全く症状がなくても肝機能検査で異常値を示すことがあり、知らない間に病気が進行することがあります。このためウイルスのキャリアであることが分かったら、専門の医療機関を受診して肝臓の状況をチェックし、適切な治療を行う必要があります。

 

 肝炎ウイルスの治療法は、かつてはインターフェロン製剤が主力でした。患者の体内にC型肝炎ウイルスを排除する物質を作らせたり、異物を排除する免疫の反応を強くする注射薬です。しかし、近年は肝炎を鎮静化し、患者さんの身体的負担が軽い飲み薬での治療法が行われています。

 

 また治療費も、健康保険はもちろん、申請すれば自己負担額が月1万円(または所得により2万円)に抑えられるなど、治療環境は劇的に改善されてきています。

 

出典:奈良県公式ホームページ「肝炎対策について」より

 

 

奈良県民の受検率は低く全国41位

 ――早期発見による早期治療によって肝炎ウイルスは治癒できるようになりつつあるとのことですが、ネックはどのような点でしょうか。

 

 吉治 肝炎ウイルス検査を受検する方が少ないことです。検査は血液検査ですが、感染していても症状が出ないため、検査を受けない方が多いのです。全国的な傾向として受検率が低いのですが、とりわけ奈良県では低く、全国47都道府県中41位です。

 

 

“調整役”養成で肝炎啓発の取り組み強化

 ――どうすれば受検率が向上するのでしょうか。

 

 田中 吉治先生をはじめとする奈良県の方々がさまざまな努力をしておられます。奈良県ウイルス性肝炎患者等重症化予防推進事業として、肝炎ウイルス検査の実施、相談事業、陽性者のフォローアップ事業などです。また助成事業も併せて取り組まれています。最大の課題は受検率そのものが低いことです。

 

 私はNHKで奈良放送局に移る前は、佐賀放送局に勤務していました。佐賀県は肝がんによる死亡率が全国ワーストワンでした。したがって県民の肝炎ウイルス検査受検率の向上が大きな課題になっていました。そこで2014年からNHK佐賀放送局では、佐賀版のニュースで特集番組を制作しました。また「ストップ!肝がん ~佐賀県民のチョイス~」と銘打ったトークイベントおよび啓発イベントを実施しました。

 

 それらの番組広報と並行して、佐賀県では肝炎データベースを作成し、市町村単位で肝炎の感染状況を把握してきめ細かい対策を講じるとともに、肝炎のコーディネーターを養成し、地域での啓発活動に取り組む体制をつくりました。

 

 吉治 佐賀県での取り組みは奈良県でも非常に参考にさせていただき、肝炎コーディネーターの養成に尽力しているところです。ただ取り組みのスタートが遅く、まだ顕著な成果は上がっていません。啓発事業として奈良マラソンの会場でトークイベントを行うとともにその場で検査をさせていただいたところ、陽性者が発見されるなどの効果はありました。今後も肝炎啓発プロジェクトの取り組みを通じて、受検率アップに努力していきたいと思います。

 

 

 

 

一生に1回受検

 ――これからの取り組みについて。

 

 吉治 肝炎は近年、非アルコール性肝炎の患者さんが増加するなど、新しい課題も出てきています。まずは第一に、一生に1回受けるだけの肝炎ウイルス検査を受検していただくこと。早期発見による早期治療を開始することが肝炎ウイルスの拡大を防ぐ第一歩です。私としては、肝炎ウイルス検査受検率全国トップクラスとは言いませんが、とりあえず全国平均を目指していきたいと思います。 

 

 田中 吉治先生の受検率全国平均という目標は、私も同感です。佐賀放送局で番組制作のための取材で、患者さんの声をお聞きしてきました。

 

 また私の父は内科医ですし、知人の父が肝がんで亡くなるなどの経験をしています。また元佐賀大学肝疾患センター長で肝疾患の治療に当たられている江口有一郎先生との出会いもありました。現在はネットやSNSの発信も普及し、さまざまな情報が拡散されています。私としては奈良放送局でも肝炎の啓発番組を企画しており、1人でも多くの県民に視聴していただいて、守れる命を守っていくことができればと考えています。

 

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