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逆説!奈良にうまいものあり - 四季を彩る日本料理 おもてなしの心で

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奈良県産食材にこだわり研鑽

奈良県日本調理技能士会トップが語る

 日本には四季があり、日本人は季節の食べ物、旬の食材を好む。おもてなしの心を大切に、奈良県民をはじめ奈良に来県する多くの人に「おいしかった」と喜ばれる料理を提供するため、調理技能士の技術向上と組織化に尽力する奈良県日本調理技能士会のトップ、名城建伸会長(66)と清水裕会長代行(62)に話を聞いた。

 

春をイメージした料理。海の宝石と呼ばれるホタルイカを春の息吹を感じさせるウルイで巻いた一品や小アユ、サヨリとタイの手まり寿司などを彩りよく盛り付けた

 

 

食文化受け継ぎ次世代へ伝承を

 昨年4月、前会長からバトンを受け継いだ名城会長は「近年、日本料理(和食)が国際的に注目を集めている。食は民族の伝統文化の一翼を担っており、日本料理は日本人の長年の伝統の中で培われてきた。また、旬の物を食べるということは、その食べ物にとって一番おいしく、栄養があり私たちの健康にもつながる」と話す。

 

名城建伸会長

 

 

 清水会長代行は「飽食の時代といわれる今、食に関する情報は豊富で、世界中から食材が手に入る。豊富な食材を使う和食は栄養に偏りが少なく、安心・安全。さまざまな食材を取り入れているが、四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化も大切にしたい。その土地で培われた食文化を受け継ぎ、次世代へ伝承することも私たちの役目」と力説する。

 

清水裕会長代行

 

 

奈良が発祥地の多彩な食べ物

 日本で最初に都が置かれた奈良には、その昔、遠く大陸からチーズやバターのルーツといわれる「蘇(そ)」や「酪(らく)」が伝わったほか、全国各地から多彩な特産品が送られてきた。魚介類や塩も食していたことが平城宮跡から見つかった木簡などから分かる。


 飛鳥・奈良時代に大陸の影響を受けた奈良の食文化に目を向けると、修験者や十津川郷士が欠かさなかった伝統的な保存食「ゆうべし」が浮かぶ。まんじゅうや清酒、そうめんなど、おなじみの食べ物も奈良が発祥地だ。にもかかわらず、「奈良にうまいものなし」と揶揄(やゆ)されてきたが、同会はこれを返上したい、と日々、研鑽(さん)している。

 

 「(奈良県日本調理技能士会は)調理従事者の技術向上を目的に、2年に1度コンクールを実施。参加者は創意工夫を凝らした料理を出展してくれる。ほかにも試食会や各種講習会などを開いている。新型コロナウイルスの感染拡大でこれらの開催を自粛するなど、影響は甚大だが、手をこまねいてはいられない。こんな時だからこそ、奈良産の食材にこだわり、新たな提案をしたい」と名城会長。

 

 その上で「奈良県大和郡山市内の店で料理顧問をしているが、同市のある団体が絶滅が心配されている大和橘(たちばな)の栽培や商品化を進めている。何か料理に使えないかと相談があり、検討中だ。大和橘は豊かな香りと上品な苦み、酸っぱさが特徴で、料理にかんきつ類をよく用いるヨーロッパの人々に好まれるのでは」と話す。


 同会はこれまでも、そば粉を一切使わずに大和高原一帯で育った大和茶だけを使った「大和茶麺」などを考案。栄養価の高いモロヘイヤを練り込み、滑らかな喉ごしの良さで人気を得た。さまざまな料理にアレンジされ使われているだけに、大和橘を使った「奈良の名物」がお目見えするのもそう遠くはなさそうだ。

 

 「時代のニーズに合わせ、料理も変わる。フレンチやイタリアン、中華などの素材を上手に組み合わせることが大事。私は隠し味にトリュフオイル(トリュフの香りを移したオリーブオイル)などを用いている。橘は日本固有のかんきつ類と聞いているが、どんな料理ができるか楽しみ」と清水会長代行。

 

 

大和野菜を用いブランド力向上

 奈良県内で戦前から生産され、地域の歴史・文化を受け継いだ独特の栽培方法により味、香り、形態、来歴などに特徴を持つもの、と定義された「大和の伝統野菜」や「大和のこだわり野菜」も積極的に用いている。「2005年に始まった大和野菜の認定はブランド力を向上させ、生産者はもちろん、私たち料理技能士にとっても励みになる。ただ、生産量が少なく、ある程度まとまった量の確保が難しいのが難点。そんな中、比較的手に入りやすく、これから旬を迎える大和丸なすなどはお薦め」とも。

 

 

料理人の工夫で「食品ロス」対応

 本来食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」に対する取り組みも。今回、春をイメージした料理を作った清水会長代行は、豆腐を作るときに、大豆から豆乳を絞った後に残った「おから」を目にも艶やかな一品に仕上げた。大豆の風味やタンパク質、食物繊維が豊富で安価。近年、いわゆる健康食品として注目されているが、廃棄されることも多い。「もったいない」から生まれた一品には料理人の工夫から生まれたおもてなしの心があり、プロの料理人としての誇りが感じられる。


 「おいしかったと喜ばれ『奈良にうまいものあり』と言ってもらい、また来てもらえるような料理を提供したい」と名城会長。普遍的な歴史、伝統、文化とともに、食が奈良の観光の中心となり国内はもとより世界に発信されることだろう。

 

 

ユズの香広がる保存食 ゆうべし

 奈良県十津川村では毎年、冬になると古くから保存食として重宝されている「ゆうべし」作りが行われる。ユズの果肉をくり抜き、その中にみそやそば粉、かつお節などを詰め、2〜3カ月寒風にさらして作る。

 

寒風にさらされる「ゆうべし」

 

 

 「谷瀬の吊(つ)り橋」を見下ろす谷瀬の集落でも、十数軒が組合をつくり伝統を守っている。もぎたての黄色いユズは日に日に色が変わり茶褐色に。薄く切り、みそ汁やお茶漬けに入れて食す。芳醇なユズの香りが広がり、近年は珍味としても人気だ。

 

谷瀬の吊り橋

 

 

地域活性化の切り札に 大和橘

 日本固有のかんきつ類「大和橘」。果実は2~3cmほどの大きさで黄色く、果皮は薄く滑らか。市場でよく見るミカンをそのまま小さくしたような形だが、酸味が強く、そのまま食べるには適さないようだ。

 

 ただ、古事記や日本書紀に不老不死の霊果として登場し、万葉集にも数多くの歌が詠まれている。歴史的な背景や希少性が加わり、栽培や商品化による地域活性化に取り組む動きがある。「なら橘プロジェクト推進協議会」が力を入れている。

 

 推進協議会はこれまでに奈良市の平城京と明日香村の橘寺を結んだことから橘街道とも呼ばれる「中ツ道」沿いや天理市の「山の辺の道」などに約2千本を植樹したほか、多くの社寺に奉納し植樹している。

 

 果実を使った菓子やお茶などの開発・販売も進めている。これらの取り組みは内閣府の地域活性化モデルケースに選定された。近年、甘さばかりを追求せず、芳醇な香りや上品な苦み、酸っぱさが好まれる傾向が強まり、奈良を活性化させる切り札として注目されている。

 

たわわに実る橘の実

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