通信制高校卒業生・在校生インタビュー 「私と通信制高校~夢への歩み~」
昨今、教育の現場は多様化し全日制に通うことが当たり前の時代ではなくなった。通信制高校への進学は、不登校などにより全日制高校へ通うことが困難な子どもをはじめスポーツや芸能など自分の夢を追い求める生徒が学ぶ場としても不可欠となっている。
今回は、通信制高校に実際に進学した生徒たちに、自らの夢に向かって歩む姿やその過程での思い、学校での生活などを取材した。新しい選択肢としての通信制高校。この進学で得た「夢への一歩」を紹介しよう。
長尾谷高等学校 奈良校
大阪府の認可を受け1993年に開校し、今年で創立27年目を迎える。以来、全国の通信制・単位制のさきがけとしてリードしてきた伝統ある高等学校。大阪府枚方市の本校の他に梅田校、なんば校、京都校、奈良校と5つの学び舎があり、地域に根ざした教育活動を展開しており、これ迄に約18,500人の卒業生を送り出している。
●出席者
3年次生・普通科 坂下 紗良さん(18)
澤 光基先生(地歴・公民科)
■学校紹介と特長
ー学校の特長をお伺いします
澤
授業風景
坂下
私は当初全日制の高校に通っていましたが、学校生活の中で自分の思いとは違うことがあり休学をしました。その結果、毎日の通学は自分にとって厳しいかもと思い通信制高校に行くことに決めました。
長尾谷高校に決めたのは週に3日の通学で自分で学びたいことを選ぶところ。自分に合っているかもしれないと感じましたし、自分で学ぶことを考える大学のようなシステムが特長ですね。
ー入学する前と実際に入学してからはどうでしたか
坂下
入学する前、通信制高校と言えば「単位を取ればいい」といった合理的な感じなのかと思いましたが実際入学してみると、先生方との距離感は近く、親身になってくれますし、学習面でも自発的に学びたいと思う内容が多く驚きました。
分からないことがあれば先生に聞きにいけばすぐに教えてもらえるので問題なかったですし、何でも気軽に聞ける環境ですね。
澤
苦手な部分は私たちが少しずつ丁寧に指導しますから大丈夫です。また「総合的な学習の時間」というのがあり、奈良校ではメイク、クッキング、映画で学ぶ英語の世界、世界遺産講座など盛りだくさんのメニューがあります。
特別活動ではキャンプ体験、ウォーキングもあり、秋の校外学習ではユニバーサルスタジオジャパンにも行きます。また、通信制高校にしては珍しい修学旅行は東京ディズニーランドで、生徒たちはとても楽しんでいます。
ウォーキング
キャンプ体験
クッキング
坂下
私はメイクと映画で学ぶ英語の世界を選びました。メイクは何と10時間も専門家の方が指導してくれるんですよ。将来、社会に出た時もTPOに合わせた素敵なメイクができるよう教わりました。映画で学ぶ英語の世界ではディズニー映画を観て英語のちょっとした言い回しや表現を習得します。
ー学校での生活面はどうでしたか?
坂下
週3日の通学ですからほかの日は自分の時間として有効活用できました。アルバイトをしたり一人で遠出してみたり。色々なことににチャレンジしてみようと思ったのもこの学校に入学したからだと思います。
また、この学校には様々な年齢の方が在籍しています。おかげで年上の方も同じ年の子も幅広い友だちができたのは自分にとって宝物です。
■夢へ向かって
ーでは、将来の進路について教えてください
坂下
4月から大阪芸大へ進学します。絵が好きだったのでグラフィックデザインなどを学びたいと考えました。3年生の4月ころに大学受験を決めて8月には入試がありましたから時間がなく、もう毎日猛勉強しました。色彩構成、デッサンなど実技の勉強のほか作文と面接対策は先生にお願いしました。
澤
作文も面接も本当によく練習したね。夏休みも学校に来てました。
ー進路選択について先生方が親身に相談にのってくれるのですね
坂下
本当にその通りです。私は当初、専門学校に行こうと思っていたのですが、先生方が私の性格を考えて、4年間深く、じっくり考えられる大学への進学を強く勧めてくれました。「色々なことを幅広くたくさん学べて、そこからに何がやりたいかを見つける方がいいだろう」と。あの時の先生のアドバイスのお陰で大学へ進学することに決めました。
実際、デザインにしてもインテリア、グラフィックなど多くのジャンルがありますからまずは幅広く学び、どんなジャンルも挑戦したいと思っています。
ーデザイナーとしての夢は
坂下
デザインで人を笑顔にできるようなデザイナーになりたいです。そして面白い、楽しいという気持ちを自らが持ってデザインをしていきたいです。
■高校生活で得たもの
ー最後に後輩たちへメッセージを
坂下
学校に行けなくて家にこもっている人がいるなら、散歩でも良いので外へ出てみてください。ほんのちょっと外に出ればそこから何かが始まるかもしれません。しんどいことを抱え込んでしまうと余計につらい。自分から助けを求めないと誰も助けてくれません。だから親でも友だちでも自分からどんどん話してみてください。
最後に私はこの学校で多くの人に出会えました。見た目が怖そうな人も、人との関わりを避けたいような人も、様々な人がいましたが、実際に話すとみんな親切でやさしい人たちでした。同じようなつらい思いをしてきたもの同士で、気持ちを分かち合うことができました。通信制高校は、私にとってただの通過点だと思って入学した学校でしたが、今はこの学校に来れて本当に良かったです。感謝しています。
澤
通信制高校への進学を希望する方へ。不登校など学校へ行きづらい生徒へは「今の環境がすべてではない」ということを伝えたい。もっと広い社会があり、楽しいこともたくさん見つけられる世界が必ずあります。ほんの少しの勇気で一緒に環境を変えましょう。
また自分の目指す目標がある人も応援します。本学は多様性を認めています。
どんな人もぜひ一度この学校を訪ねて欲しいです。明るい未来をともに作りましょう。
■学校情報
【学校説明会】
1月25日(土)
2月15日(土)、22日(土)、29日(土)
3月7日(土)、14日(土)、21日(土)
13時から
※転入学・編入学は随時受付中
●長尾谷高等学校奈良校
・公式HP▷こちらから
・住所▷〒630-8115 奈良市大宮町1丁目115-1
・電話番号▷0742(30)1131
・アクセス▷奈良大宮通り中央郵便局並び近鉄奈良線「新大宮駅」より東へ約700m、JR奈良駅西出口より北へ約550m
奈良女子高等学校通信制課程
明治26(1893)年創立の学校法人白藤学園が70年にわたる女子教育の経験を生かし、平成26(2014)年に開設した西日本初となる女子のみの通信制高校。
●出席者
卒業生(京都産業大学3年生) 村田 梨緒さん(21)
松井 昭男先生
■学校紹介と特長
ー学校の特長をお伺いします
松井
本学の一番の特長は「女子のみ」という点です。安心できるという声をよく聞きますし、長年女子教育に携わってきた本学ならではのノウハウも持っているかと思います。
入学式
松井
また、本校へ入学したら絶対守っていただく約束があります。それは「自分が嫌なことは人にしない」こと。この約束ごとはみんな、守ってくれるのでそれも安心できる要素だと思います。
村田
私は前の学校で人間関係がうまくいかず体調をくずしてしまいました。そんな時、母が高校を卒業してほしいとの思いからこの学校を見つけてくれました。学校の施設内にあるので、きちんと通学している感覚が決め手でした。
松井
スクーリングは週2回ですが、週2回といわず毎日でも登校してかまわないですし、校外学習、修学旅行、製菓・調理体験やデザイン講座などの特別学習などが多いのも特長です。勉強以外に生徒同士のふれあいを重視し、人間教育を大切にしています。
スクーリング
松井
本学の生徒は真面目でしっかりとレポートを出す生徒が多いですね。しんどい思いや辛い思いをした生徒もいますので心の痛みを知っています。人に対して優しい思いやりを持った生徒が多いのも特長です。
ーでは入学前と後では違いがありましたか
村田
入学する前は淡々と授業に出てレポートを出して卒業する、というイメージでしたが、入学してみると先生との距離が近いことに驚きました。わからない部分を質問に行くのも気軽に行けましたし、何もなくとも、ただおしゃべりしに行くというのもありました。それに先生とだけでなく友だちに会うために毎週木曜日はスクーリングがなくとも登校してましたね。
PCを使ったデザイン講座
看護・介護体験
松井
私たちはまず、生徒の話を全部、最後まで聞こうと思っています。アドバイスするにしても生徒の言いたいことをすべて聞いてからのことですね。人数が少ない分、きちんと一人ひとりを見ていられるのです。今は1学年30人ほどですが、村田さんのころは1学年5人でしたね。
村田
はい。5人でした。修学旅行の際は生徒5人のうち2人欠席だったので、生徒3人と先生2人で行きましたから、まるでファミリー旅行のようでしたよ。
修学旅行
夏合宿
■夢へ向かって
ー将来の進路はどうでしょう
村田
今、京都産業大学の現代社会学部メディア社会学コースの3年生です。テレビ、広告、インターネットなど人や社会を動かす力を持つメディアの本質について学んでいます。
実は高校在学中は進学にそれほど熱心ではなかったのですが、先生に相談すると「将来の幅が広がるから」と勧めてくれました。ちょうど高校3年の夏くらいですね。
松井
本学ではほとんどの生徒が卒業後は大学、短大、専門学校へ進学しています。資格取得を目指す生徒もいますし、まだ将来の夢は決まっていないが今はしっかり勉強して考えたいという生徒もいます。送り出す方としては最善の方向へ導いてあげたいですね。
村田
何か迷ったりした時、先生方が励ましてくれました。本当によく私たちのことを見ていてくれているんだなと感じていました。
ー将来の夢は
村田
私はテレビやネット番組に関わりたいと思っています。モノを作ることに興味があるので、できたらドラマなど制作の方に携わりたいです。
我が家ではテレビは生活に浸透していて、とても身近なものだったのです。だから日々の暮らしが充実して楽しい毎日が送れるような番組を作りたいと思っています。
■高校生活で得たもの
ー最後に後輩たちへメッセージを
村田
この学校はアットホームなところです。みんな人を思いやれることができます。しんどい時は、目の前の環境にしか気持ちが向かないけれど、そこがすべてではなかったと知りました。私は社会に出たらもっともっと広い世界があることをこの学校で学びました。今この瞬間だけでなく、将来を見てください。きっと自分が楽になりますよ。
それから、この学校で一緒に学んだ5人は生涯の友だちだと思っています。卒業した今も連絡は取りあっていますよ。この学校に来たからこそ出会えた大切な友だちです。
松井
この学校には目的があってくる生徒、人間関係に疲れてくる生徒、みんな様々な状況があります。でもどの生徒も安心して学校へ来れるようにしています。ここには必ず居場所がありますから、大丈夫じゃない時も飛び込んできてください。一緒に歩んでいきましょう。
私は生徒たち全員が限りない可能性を持っていると思います。私たちはその可能性を信じているし生徒の皆さんも自分を信じてがんばってほしいです。
■学校情報
【お悩み相談】
随時受付中
電話で問い合わせください
【入試日】
令和2年2月15日(土)14時~、3月20日(金・祝)14時~
●奈良女子高等学校通信制過程
・公式HP▷こちらから
・住所▷〒630-8121 奈良市三条宮前町3番6号
・電話番号▷0742(85)1792
・アクセス▷近鉄奈良線「新大宮駅」より南東へ約600m、JR奈良駅西出口より西へ約400m
●資料請求はこちらから
天王寺学館高等学校
大阪府、奈良県のみを校区とした数少ない狭域通信制高校。昭和28(1953)年創立の天王寺予備校からスタートした学校法人天王寺学館が地域に根ざした柔軟な教育実践を目指し、平成14(2002)年開校、平成22(2010)年、大阪市平野区に校舎を移転。
●出席者
卒業生(大阪府立大学1年生) 白川 由紀美さん(19)
高井 雅志先生(校長代理)
■学校紹介と特長
ー学校の特長をお伺いします
本学では、今までの学力ではなく、「これから勉強したい」という気持ちを持っている方にお越しいただいています。向学心と学習意欲、そして他者を思いやる心がある、こういった方は本学の校風に合うと思います。
登校頻度別に週3日午前だけから週5日全日まで3つのコースを設け、生徒の希望によってコース変更も可能です。午前9時から午後5時まで科目はみっちりあり自分で選択できますから「学びたい」という欲求は十分に満たされると思います。
授業風景
白川
私は中学3年生の時、病気をして丸々1年間学校へ行けませんでした。普通に高校へ進学するつもりでしたが、1年間のお休みで学力も思わしくなく入試を受けられませんでした。でも「高校へ行きたい」という気持ちはあり、通信制高校への進学を決めました。
この学校に決めたのは家から近いというのもありますが、まず「学校へ通いたい」という気持ちが大きかったことです。クラスがあり、授業に出て勉強するということがしたかったのです。
ーなるほど。1年間の休学で通学への思いが強まったのですね。入学する前と入学後ではどうでしたか。
白川
入学前は通信制高校は規模も小さく、少人数だし、どうやって勉強すればいいのか分からず不安でいっぱいでした。中学時代の友だちはみんな、全日制高校に通っているのに自分だけ違う…という気持ちもありました。
でも入学後、不安はさっぱり無くなりました。通信制高校って普通に楽しめるんだと分かったのです。学習面でも困ることはないし、文化祭、体育大会もあるし。
天学祭(文化祭)
天学祭(文化祭)
白川
特に学習面では、8時間目まで授業はありますが自分で授業を選択しますので合間の時間もあり、自分の時間が持てることがいいですね。日々の復習やテスト勉強など自分でスケジュールを立てて学ぶ姿勢を作るのです。こういった自分で何かをやっていくというのは自立心にもつながり将来役に立ちそう。
高井
毎日休まずに学校へ通っていましたね。皆勤賞で頑張り屋さんです。卒業時には大阪府内の各校それぞれ、優秀な生徒1名に贈られる「大阪府知事賞」を獲得しましたね。
白川
学校に来るのが楽しくて。1年生の頃は1クラス10人ほど、学年が上がると転入生も来るのでもう少し増えますが、みんな気持ちの優しい人ばかりで家族みたいな感じでした。授業も選択によってはマンツーマンの時もありましたよ。
高井
本学には色々な事情を抱えた生徒が来ていますから、人のことを受け入れることがすでに生徒自身に備わっています。学校に来るのが楽しいと話してくれましたが、そういった雰囲気作り
は私たち教員も精一杯努力していますが、何より生徒たちが作ってくれているのです。
■夢へ向かって
ー将来の進路について教えてください
白川
大学へ進学したいとは思っていましたが、具体的に大阪府立大学の看護学科を目指したのは2年生の夏も終わるころ。それまでは社会学部や法学部、文学部などの説明会に参加していました。でも、自分が何になりたいか分からず参加していたのでどれもピンとくるものがなくて。
そんな時、今も2か月に1回通う外来診察で看護師さんに接して「これだ」と思いました。病気をきっかけに看護師を目指したといえますね。
もちろん看護師なら専門学校へ進学してもなれます。でも私は、同じ道を目指す人ばかりではなく、ほかの夢を持つ人にも出会いたいと思って今の大学に進みました。志望校のことでは先生にもよく相談に乗ってもらいました。
高井
進路で迷ったり、困ったりしたらいつも気軽に相談に来てくれていました。勉強で分からないことはもちろんですが、何がひっかかっているのか話しにくるだけでもいいんですよ。私たちは一人ひとりの声に耳を傾け、卒業して社会に出ても「生き抜く力」を身に付けてくれることを願っています。
■高校生活で得たもの
ー最後に後輩たちへメッセージを
白川
今、私は自分の経験としてこの学校へ入学してよかったと思っています。
中学3年生で1年間休学した時、私はこの先本当にどうなるのかと自分でも思いました。普通に高校進学するつもりができなくなったのですから目の前が真っ暗になった気持ちでしたよ。
でもこの学校と出会い、友だちや先生と出会い、普通に生活をしていたら体験できなかっただろう多くのことを経験しました。だから、たとえ思っていたように道を進めなくとも、何とかできるんだということを学びました。通信制高校でも大学へ行けるし、やりたいことがあったら叶えることもできます。
校外学習
白川
例えば私、2年生の時、ニュージーランドへ語学留学も行ったんですよ。中学3年生のころには考えられないくらい高校生活を満喫しました。
だから通信制高校は、一つの選択肢としてあるんだと思います。皆さんにもここで自分の夢を見つけられたらいいなと思っています。
高井
「これまで」がどうだったかは関係ありません。「これから」を作っていくことが大切です。勉強をもう一度がんばりたいという気持ちがあれば必ず明るい未来があるはずです。
もし、精神面や身体面で困っている方がいれば、一度相談に来てみてください。明るい、そして自分にとって誇らしい「これから」を作るきっかけになることを願います。
■学校情報
【学校相談会】
1月25日(土)
2月1日(土)、29日(土)
3月7日(土)、14日(土)、21日(土)
10時から
※1月25日(土)のみ13時30分から新入学(中学生対象)の相談会あり
※学校説明会参加は要事前電話予約
※学校見学可能(要事前電話予約)
※転入学・編入学は随時受付中
●天王寺学館高等学校
・公式HP▷こちらから
・住所▷〒547ー0041大阪市平野区平野北1-10-43
・電話番号▷06(6795)1860
・アクセス▷JR大和路快速「天王寺駅」または大阪メトロ「天王寺駅」よりJR関西本線に乗り換え=JR「平野駅」すぐ、近鉄「鶴橋駅」より千日前線に乗り換え=「南巽駅」より南に徒歩約16分
本学の建学の精神は「自学自習」です。ただ指示を待つのではなく、自らの意思で学習することを学びます。これから社会へ出た際にきっと役に立つはずです。
スクーリングは月・水・金の週3日間です。中学新卒生の学習を手助けするサポートクラス(週2日)もあります。また、総合学習や課外活動、部活動も自分の意思で参加、不参加を決められますので、自分に合った学校生活が送ることができます。