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「感動を表現する俳句入門講座」受講作品

 

俳句の楽しさを学ぶために

 このページは2019年10月7日・21日に奈良新聞社で開催された「感動を表現する俳句入門講座」(奈良新聞社主催・講師/辻本康博さん)の受講者の作品を掲載しています。

 

添削前と後の作品で、作品がどのように変わったのかをご覧いただき、俳句表現の楽しさをお伝えするものです。

 

講師による添削・コメントは、作品への優劣をつけるものではありません。

 

俳句の良さを引き出すためのテクニックの一つとしてご覧ください。

 

 

受講者作品と添削

① 衆生界 照らす佛に 祈る秋 

  (池田秀雄さん)

講師コメント

 衆生界は仏語。衆生の住む迷いの世界。人間界。現世。衆生界照らすとあるが、救済するという表現の方が良い。何か教えの教訓めきて、俳句の詩情に乏しい。

<添削の句> 

衆生界 救う法話や 九月尽

 

 

 

② 秋の蚊を 打てば一滴 血潮飛ぶ 

  (吉岡淘汰さん)

講師コメント

 残酷、汚いもの、差別は俳句では詠まない。確かに蚊を打てば血潮が飛ぶ。だが蚊に血をたっぷり吸わせ逃がす。この様なあたたかい心が欲しいものです。 

<添削の句>  

秋の蚊に 血を吸わさせて 逃がしおり

 

 

 

③ 駆け寄りて 助く若者 清し秋 

  (上田恵美子さん)

講師コメント

 清し秋の季語が造語みたい。秋清しが正解。駆け寄りて助ける具体的なものが分からない。老人と断定する。季語は頭から爽やかやと詠む。

<添削の句> 

爽やかに 老人助く 若者よ

 

 

 

④ 晴天や 稲刈る爺の 身の軽し 

  (芦村文子さん)

講師コメント

 俳句は驚きと発見の「うぶな感性」が大切。この句は大方の爺はよたよたしているが、作者が見た爺は若者みたいに身のこなしが軽く、驚いている様子が見て取れる。添削はなし。

 

 

 

⑤ 夕日染む 旧家の屋根に 木守柿 

  (内藤和子さん) 

講師コメント

 木守柿は翌年もよく稔るようにと梢に一、二個残しておく。景が良く見える。旧家の屋根とあるが、屋根に柿があるのはおかしい。残るでいい。

<添削の句>  

夕日染む 旧家に残る 木守柿

 

 

 

⑥ 銀杏の 落ちて匂うや 川の端 

  (坂本寛子さん)

講師コメント

 大阪の御堂筋通りの銀杏並木が有名。落ちて匂うは当たり前。すごい匂いとか、この匂いに季節を感じるなどの詩情が欲しい。川の端はただ下五に合わせただけ。

<添削の句> 

銀杏の 落ちて匂うや わが母校

 

 

 

⑦ 秋刀魚干す 熊野の海の 風匂う 

  (楠和子さん)

講師コメント

 今年は暖冬か、海流の関係か、秋刀魚が不漁で、高級魚になってしまった。秋刀魚の天日干しは美味しい。この句で一か所だけ添削。

<添削の句> 

秋刀魚干す 熊野の浜の 風匂う

 

 

 

⑧ 椿の実 弾ける音や 聞き洩らし 

  (佐古充子さん)

講師コメント

 椿の実の弾ける音は聞いたことはない。どんな音だろうか?この句で一か所だけの添削。

<添削の句> 

椿の実 弾ける音を 聞き洩らし

 

 

 

⑨ 明けやらぬ 空に合掌 秋深し 

  (国分淳一さん)

講師コメント

 私も年老いてよく神社仏閣に合掌する。老いれば早寝早起き。私は四時に起床の毎日。明けやらぬ空は空気が澄み、美しい。その空に向かって合掌、何を願っただろうか?下五の秋深しの季語が秀逸。添削の句はなし。

 

 

 

⑩ 帰省して 伽藍に一人 風さやぐ 

  (辰野弘美さん)

講師コメント

 帰省は夏の季語。盆帰省などが初秋の季語。風さやぐはざわざと音がする。故郷への帰省。都会での悲しい嬉しい思いがある。

<添削の句> 

帰省して 堂の伽藍と 対面す 

どのような会話をするのだろうか?

 

 

 

⑪ リハビリの 窓から見ゆる 菊花展 

  (鈴木良子さん)

講師コメント

 リハビリの毎日はつらい。体を元にはならぬが何とか頑張っている。手を休め、ふと窓から外を見ると、懐かしい菊花展が開催されている。心が癒されるひと時である。添削の句はなし。

 

 

 

⑫ 赤トンボ 空に絵を描き 雲ながれ 

  (岸田真美子さん)

講師コメント

 空に絵を描きの中七のフレーズはすばらしい。それだけで良いのに、雲ながれは一言多い。

<添削の句> 

赤トンボ 空に絵を描き 翅休め 

平然と、峠越えなどと赤トンボのその後の仕草などを詠む。

 

 

 

⑬ コスモスは 去年より見事 零れ種 

  (山中安冊子さん)

講師コメント

 零れ種は自然に落ちた種子。それからはえた植物。去年より見事は良いが、次の零れ種が分かりにくい。

<添削の句> 

コスモスや 飛鳥の里の 晴れ舞台

 

 

 

⑭ 天災の つめあと恐し 忘られぬ 

  (鈴木能子さん)

講師コメント

 散文調で新聞の見出しみたい。爪痕と漢字で表現。爪痕は無残でと詠み、恐ろしと答えを言っている。自然界と人間界との戦いは歴史が古く人間界は不利。

<添削の句> 

日ノ本の 天災無残 今日も生く 

 

 

 

⑮ 取り残し ぶどう口にす 見学会 

  (増田一夢さん)

講師コメント

 見学会で残されたぶどうを戴く。残されたぶどうといえど味は変わらない。丹精込め育てた我が子のようなぶどう。口にすは要らないフレーズ。

<添削の句> 

最後まで 自慢のぶどう 見学会

 

 

 

⑯ 枝豆の 緑艶やか 香の仄か 

  (脇本和子さん)

講師コメント

 季語の枝豆の説明。香(か)の仄かは香(こう)仄かの方が韻文らしい。枝豆に関する出来事を詠む。一心不乱に食べるとか。

<添削の句> 

枝豆や 母子の会話 姦しく

 

 

 

⑰ 月明かり 宮跡被る 円盤か 

  (大矢雅信さん)

講師コメント

 下五に急に円盤かが出てきた。前後の繋がりが分からない。一人よがりの句と言えよう。月明かりを月今宵(名月)にして詠む。

<添削の句>  

月今宵 平城宮址に 円盤か

 

 

 

講師が選句した受講者の作品一覧(添削済)

 2回の講座で学んだ内容をもとに、受講者が2句を作成。講師が良いと思った句を受講時間内で解説し総評しました。

 

講師による添削済の作品を掲載します。(2019年11月14日付の奈良新聞へ掲載された作品です)

 

受講者の作品を添削する講師の辻本さん

 


一張羅も 野良着も道化 案山子かな 

(芦村文子さん)

 

牡鹿の 固き角もて 妻を守る 

(池田秀雄さん)

 

若返り 学ぶ講座や 秋うらら 

(上田恵美子さん)

 

天平の 宮跡を照らす 月明かり

(大矢雅信さん)

 

秋の暮 駆けたる子らの 影長し

(岸田真美子さん)

 

髭男 胸には愛の 赤い羽根

(楠和子さん)

 

の風 御堂に憩う 老二人 

(国分淳一さん)

 

暮れの秋 ピアノ弾く子の 反抗期 

(坂本寛子さん)

 

住み慣れた 校庭巡る 帰燕かな 

(佐古充子さん)

 

台風一過 記紀の山河の 晴間かな 

(鈴木能子さん)

 

亡き父の 好きな木犀 咲き始むる 

(鈴木良子さん)

 

幾たびも 日を問う母の 秋彼岸 

(辰野弘美さん)

 

句に引かれ 爽秋を晩 学の座に

(内藤和子さん)

 

PLの搭 見ゆる斜面の ぶどう熟る

(増田一夢さん)

 

白鷺の 間合を測りて 飛び立てり 

(山中安冊子さん)

 

カリヨンを 聞く金髪の 捨案山子 

(吉岡淘汰さん)

 

台風一過 大事な畑 気になりて

(脇本和子さん)

 

(五十音順)

 

講師/辻本康博さん

 「大和青門」代表、県俳句協会理事。師系の俳誌「青門」が60年余で終刊、「青門」の灯を消してはならないと、青門大和俳句連盟と共に平成23年に「大和青門」を隔月で創刊。


「青門」の現代仮名遣による有季定型俳句、写実から一歩踏み込んで主観を内包した平易清新の句風を踏襲している。

 

平成28年3月には5年間の活動の集大成として「創刊五周年記念合同俳句集」を発刊、「子供俳句」を含め100名以上の作品を収録。大阪俳句史研究会評議員としても活躍中。

 

 

記事制作/奈良新聞社

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