奈良新聞

=奈良観光情報タブロイド ことなら。 2020年秋号 WEB版

奈良びと写真家が愛する秋風景 / 宮瀬 浩一

写真を生業にして、これまで国内外さまざまな場所を旅してきましたが、その場所場所に自分の五感が感じた色彩や形、音、匂い、感触、味の記憶があります。
わたしは、写真には、必ず『五感の記憶』が記録されると考えています。特に旅の写真には、撮った時に聞こえていた鳥のさえずり、どこからか漂ってきた花の匂い、肌を撫でた爽やかな風の感触、そして帰り道に食べたうどんの出汁(だし)の味とか(笑)。
旅が終わってから、思い出を振り返るために写真を撮っているわけですから、自分の五感を意識して旅をすると、ちょっとした近場の旅であっても、これまでよりも記憶に強く残る旅になります。
旅先で写真を撮るときには、聴覚、嗅覚、触覚を意識しながらシャッターを押してみてくださいね。そしてもうひとつ、旅の道中には、味覚を満足させることもぜひお忘れなく。
悠久の歴史、豊かな自然、固有の伝統文化と、さまざまな魅力を有する奈良には、まだまだ行ったことのない、訪ねてみるべき場所がたくさんあります。今回は奈良在住の写真家として、わたしがおすすめの「とっておき 奈良の秋風景」をいくつかご紹介します。

談山神社 境内

談山神社 境内

桜井市にある談山神社は多武峰の山中にあり、紅葉の名所として知られています。中臣鎌足と中大兄皇子が、大化の改新の談合をここ多武峰で行ったとされており、明日香からも近く、どことなくミステリアスな場所。山中にあるため樹種がさまざまで、紅葉の時期は、緑・黄色・橙・朱赤から褐色まで、さまざまな色の葉のグラデーションを楽しめます。太陽の光が強い日中より、早朝や夕方、小雨の日などのほうが、葉の色がしっとりとして美しく見えますよ。

(撮影 2019年11月12日)

談山神社 十三重塔

談山神社 十三重塔

談山神社にある十三重塔は、世界で唯一の木造十三重塔で、重要文化財に指定されています。檜皮葺(ひわだぶ)きの屋根の形状がとても美しく、その個性的な姿に魅了される人が多いそうです。この塔は境内の高台にあるため、どうしても下から見上げてしまいがちですが、おすすめは本殿側の階段を少し登ったあたりからの姿です。紅葉の時期は、周囲の楓が額縁のようになり、十三重塔を一層引き立てます。

(撮影 2019年11月12日)

若草山中腹からの大仏殿

若草山中腹からの大仏殿

有料自動車専用道路の奈良奥山ドライブウェイ新若草山コースを走ると、料金所から約500メートル辺りに「大仏殿ビューポイント」があります。ここは車でしか行けませんが、東大寺大仏殿、興福寺五重塔、生駒~金剛山系の山並みが見渡せます。ここのおすすめは紅葉時期、天気のいい日の夕方です。東大寺の境内から若草山にかけての紅葉した木々を西日が輝かせてくれ、運がよければ、黄金色に染まる古都の風景を見ることができるかもしれません。

(撮影 2019年11月23日)

奈良公園 水谷茶屋

奈良公園 水谷茶屋

奈良公園の奥、春日大社の境内近くに、茅葺(かやぶ)きの風情あるたたずまいの「水谷茶屋」があります。この辺りは若草山に続く森の木々が鬱蒼(うっそう)としており、神秘的な雰囲気のある場所です。秋は楓の紅葉が美しく、苔むした茅葺き屋根の茶屋との共演は、とても写真映えします。私のおすすめは夕方近く。茶屋に明かりが灯ると一層いい感じになりますよ。

(撮影 2019年11月22日)

若草山山頂

若草山山頂

若草山は奈良盆地の東に位置し、芝で覆われた標高342メートルのなだらかな山。そのためとても眺望がよく、山頂からは奈良の街、平城京跡、遠くには生駒~金剛山系の山並みまで見渡せます。西側に開けているため、晴れた日は夕焼けがとてもきれいです。ここで、夕日が刻々と空の色を変えていく様子を見て、奈良の夜景を眺めて一日を終えるのが私のおすすめです。

(撮影 2019年11月23日)

宮瀬 浩一(みやせ こういち)プロフィール

宮瀬 浩一

AppleのShot on iPhoneキャンペーンで、世界中のビルボードや新聞、雑誌広告などに写真が展開されるなど、スマートフォンから一眼レフまで機材を選ばず被写体を表現するスタイルを確立。国内、海外のさまざまな企業や自治体などのプロジェクトに関わる。自然が見せる優しさと荒々しさ、都市の風景の静と動・・・そんな一期一会の光景・情景を独自の視点で切り取って表現する。インスタグラムのフォロワー数は13.8万人。

インスタグラム: @koichi1717

WebSite :https://ks-photography-4.jimdosite.com/

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