自宅にエアコンのない頃の夏休みに涼をとる場所といえば、プールに図書館、映画館、そして屋内型のアイススケートリンク。中でも、滑走での疾走感、爽快感も得られるスケートは特別だった。

　観覧人気は高いのに、アイススケートリンクは平成期にかけて次々に閉鎖された。県内も同じで、遊園地併設型も含め屋内外のリンクすべてが消えた。

　県議会で再興が取り上げられもしたが、施設開設の兆しはない。競技とは別に、庶民の娯楽から外れるのは惜しい。

　だが今夏、樹脂製ながらスケートリンクが期間限定で登場した。県が奈良市の県コンベンションセンター前で開催中のイベント「光と遊びの天平広場」(20日まで)の会場の一角にある。

　氷との感触の違いは不明だが、慣れない子どもが派手に転ぶ様子からすると滑り具合は上々。涼感にはやや欠けるけれど。

　小さな体験が施設再登場につながる可能性も皆無でなく、子どもたちの姿に笑みがこぼれる。新型感染症の第7波で帰省、県外への旅をためらう家族には、飲食や他の呼び物もある近場の催しとしてお知らせしたい。(智)