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金曜時評

商店街のこれから 必要な存在であれ - 編集委員 松岡 智

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 かつて輝いていた商店街が、近年は地域経済衰退の象徴のように取り上げられる場合がある。県は本年度、新たな仕組みと方法で商店街と周辺地域の活性化を図る取り組みを始めた。従来と異なるのは商店街ごとに課題設定と解決策を探るのではなく、まず県内各地の商店街共栄のための土台組織の立ち上げを進めている点だ。組織は住民や行政、支援機関、民間企業らで構成。ワークショップなどで共通の課題を研究し、来年度以降の実践に向けたアクションプランづくりを行う。ここでは地域の持続的発展へのまちづくりの視点も盛り込まれる。

 

 事業の成否を論じるのはまだ先だが、成果に期待しつつ気になる点を挙げておきたい。

 

 まず事業推進の大きな原動力の一つが、やはり人だということ。こんな例がある。生駒市の主要商店街では全国の先進事例を参考に関係者からの指導も柔軟に採り入れ、にぎわいづくりとその後の事業発展を念頭に数々のイベントを展開して実績を重ねていた。だが中心人物がトップから去ると、新型コロナウイルス感染拡大を契機に運営組織とともにすべてのイベントが現在まで途絶えている。

 

 非日常の集客イベントを日常の経営にどうつなげ、地域全体の活性化にも生かしていくか。そんな考えを関係事業者らにあまねく浸透させるには、信頼を集める先導役が欠かせない。

 

 商店街活性化とまちづくりを同時に考える際には、商店街の未来像を描く必要もある。従来の内容、役割のままでいいのかどうか。

 

 県内でもすでに商店街内や隣接地に、新しい働き方のワーケーションとも関係するコワーキングスペースが存在する所がある。商店街の立地、事業者構成によっては新たな利用者層を見据え、周囲の観光地、施設などと一層連係を深める必要も出てくるに違いない。そんな諸要件を踏まえつつ将来像を描き、展望や夢が語れなければ、取り組みが点で収束し、面として広がらない懸念がぬぐえない。空き店舗増、職住分化が図れないなどの懸案事項も解消されず、商店街の寂しさが増幅されて衰退に拍車をかける負のスパイラルからの脱却も見通せないだろう。

 

 ある地域で暮らし、そこを古里と感じるには何がしかの決め手がある。日常の地元店舗の利用や商店主らとのかかわりも、地域への帰属意識を醸成する要素ではないか。地方創生が日々の積み重ねから実現するなら、商店街の存在意義は以前と変わらず大きい。

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