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金曜時評

凶弾と参院選 初心に帰れ佐藤氏 - 主筆 甘利 治夫

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 あれから2週間が経過した。

 

 伊藤博文や原敬、犬養毅らの首相経験者が凶弾などに倒れた事件は、教科書で学んだものだが、いずれも戦前の話だ。まさか令和の時代に、しかも奈良の地でこんな衝撃的な事件が起こるとは。

 

 それも参院選投票日の2日前という最終盤に起きた。政治的な背景はなさそうだが、まだ全容が明らかになってはいない。

 

 前日になって急に安倍晋三元首相の遊説が決まったという。今となれば迎えた自民党県連(奥野信亮会長)も、複雑な思いだろう。「奈良でなければよかった」ということではない。長期にわたり一国の首相を務めた要人を迎えるのに、対応が安易でなかったか。「安倍元首相が来県する」と、関係者に案内することのみで、事足れりとしていなかったか。

 

 もちろん要人警護の在り方が問題となった。皇族の来県が多いから、県警の警護体制は、それなりにできていたはずだが、経験豊富な慣れが、油断を招いた。同時に警視庁から派遣された要人警護のプロであるSP(セキュリティーポリス)についても問われている。

 

 そこで、今後警護重視のあまり政治家と国民との距離が遠くなってしまうことを恐れる。要人の周りが警護だらけでは、本人も不自由だろうし、近寄り難くなる。事件後には、過度な警護がなされているとも聞こえてくる。適切な警護を望むばかりだ。

 

 こうしたなかで再選を果たした佐藤啓氏の心境は、言葉にできないものであるに違いない。当選した喜びよりも、喪失感の方が大きいのではないか。まだ心の整理がつかないかもしれないが、世界的なニュースとなった、その現場の当事者だったという、その巡りあわせを受け止めることだ。

 

 6年前の選挙の時も、安倍氏は現職の首相として佐藤氏の応援に駆けつけた。今回は2度も来県している。それだけ佐藤氏に期待するものが大きかったはずだ。

 

 当面は各方面から注目され、事件について聞かれたりするかもしれない。同じことを何度も繰り返し語る場面も多いはずだ。

 

 現場にいた当事者として、当選の日に語った言葉を生涯貫いてもらいたい。再選ではなく初当選の気持ちで、今後の政治活動をしてほしい。

 

 忘れてほしくないのは、初出馬した時に語っていた「世のため人のために少しでも役に立ちたい」という初心だ。県民だけでなく、佐藤氏のこれからを全国の人が見ている。

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