屋上からの眺望を楽しむ人も多く訪れる県庁舎。そんな来訪者向けの広報や観光案内が並ぶ棚の中に、春日山原始林のパンフレットを見付けた。

　奈良公園の東に広がるこの森は、厳密には原始林ではないらしいが、市街地に隣接する貴重な植生として特別天然記念物に指定されている。

　冊子は散策マップや史跡の紹介などを掲載。手にした人を森へといざなう。また同時にシカやキクイムシによる樹木の被害、外来植物の繁殖など森が直面する課題も教えてくれる。

　ただ万葉歌にも詠まれたイチイガシなどの説明はあるものの、この木を好むルーミスシジミは絶滅と判断されたのか、記載がないのは残念。

　今の季節に羽化する小型のシジミチョウの仲間で春日奥山の生息地は森と同じく特別天然記念物。美しい姿にひかれ子どものころ探してみたが、見付けられなかった思い出がある。

　天然記念物指定から今年で90年。同地では1950年代以降に確認の記録がないというがいつか帰ってくる日も夢見て、原始林保全を解説するコーナーにルーミスシジミの話も盛り込んでほしいものだ。(松)