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金曜時評

「看取り士」に関心 「自宅で最期」願う - 編集委員 辻 恵介

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 コロナの新規感染者数も、このところ“落ち着いた”状況になってきた。長い長い“規制と自粛というトンネル”から、ようやく抜け出せそうな希望の光が見えはじめてきた。マスクについても、TPOに応じた着脱の論議がされるなど、社会の変化が見られる。コンサートやスポーツ観戦など多数の人が集まる場所では、「条件付き」での入場が認められるようになってきた。先日、筆者が行った大阪でのコンサートは、ホールに中高年2500人以上が集まり、ほぼ声を出すことなく、手拍子と拍手だけで盛り上がっていた。

 

 コロナ感染拡大により、日常生活の上で一番影響を受けた世代は高齢者であったことは間違いない。外出制限による運動不足、持病の悪化、身体機能、特に足腰の衰えが顕著になる―といった連鎖に陥る傾向にある。

 

 最近、「フレイル」という言葉をよく聞く。「健康」と「要介護」の間にある心身の調子が崩れた状態で、「虚弱」を意味するそうだ。65歳以上の1割が該当し、75歳以上で大きく増加するらしい。

 

 親や身近な人たちが「元気に晩年を過ごせるようにしてあげたい」というのは、誰しもが願うこと。コロナとの“共存”を模索する中で、フレイル対策の重要性は、今後ますます高まっていくことだろう。

 

 一方、そんな中で、「看(み)取り士」という仕事が話題になっている(5月18日付暮らし面既報)。身内の最期が近づいた時、不安や悲しみに包まれ、慣れない情況に右往左往しがちな家族に対して助言をし、安らぎの中での見送りを手伝う、というものだ。

 

 島根県出身の柴田久美子さんが会長を務める一般社団法人「日本看取り士会」(本部・岡山市)の講座を学んで得られる民間の資格。看護師を中心に全国で約1700人が認定されているという。奈良では、看取りステーション奈良ほほえみ(乗本奈穂美代表、平群町)が窓口になっている。

 

 厚生労働省の「2019年人口動態統計」によれば、国内では7割以上の人が病院で亡くなり、自宅で亡くなる人は2割に満たないそうだ。

 

 「自宅で最期を」というのは、今やぜいたくな望みなのかもしれない。自宅での見送りには、「願いをかなえてあげたい」という家族の十分な理解と熱い思い、さらに覚悟も必要だろう。かつて「当たり前」だった自宅での最期が増えていくのかどうか、見守りたい。

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