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金曜時評

ヤングケアラー 社会の意識変化を - 編集委員 高瀬 法義

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 大人に代わって日常的に家事や家族の世話をする「ヤングケアラー」が社会問題化している。今年1月、厚生労働省が実施した小学生を対象とした初めての調査で、小学6年生の6.5%が「世話をしている家族がいる」と回答したことが分かった。

 

 世話をしている家族は「きょうだい」が71.0%でトップ。次いで「母親」が19.8%で「父親」「祖母」「祖父」と続いた。父親や母親と回答した人に父母の状態を聞いたところ、「わからない」との回答が33.3%で最も高かった。父母が病気や障害を抱えていても、理解できないまま世話をしている児童がいることが浮き彫りになった。

 

 さらに、問題なのは児童自身の健康や学校生活への影響だ。家族の世話をしている児童のうち、健康状態が「よくない・あまりよくない」、遅刻や早退を「たまにする・よくする」との回答の割合が、いずれも世話をしている家族がいない人よりも2倍前後高かった。また、「授業中に寝てしまうことが多い」「宿題ができていないことが多い」「持ち物の忘れ物が多い」といった回答も同様の傾向があり、日々の生活への影響が懸念される結果となった。

 

 子どもたちが家族のケアで本来受けるべき教育の機会を奪われているとしたら、重大な人権侵害だといえる。また、若年層に限ったことではないが、少子化や核家族化が進む中、看護や介護を家族だけで行うことには限界がある。この問題で将来を担う人材の育成や働き手の確保にも支障をきたすとしたら、社会的・経済的にも大きな損失といえるだろう。

 

 今回の調査結果では、誰かに相談した経験がある人は17.3%にとどまった。家庭内の問題であり、本人に自覚がなければ表面化しづらいことが今後の課題だといえる。

 

 昔話や時代劇などでは、高齢や病気の親に対して世話する子どもたちを「孝行息子(娘)」として褒めることが多い。もちろん善行には違いなく、現実社会でも看護や介護を受ける側が家族の世話を望むことが多いのも確かだが、それを周囲や社会が「当たり前のこと」として意識し、無関心が過ぎたのではないか。

 

 ヤングケアラーへの支援には周囲が子どもたちの変化やつらさに気付き、声を掛けることが重要だ。そのためには家族のあり方に対する社会の意識の変化も求められる。決して、安易に「自己責任論」で済ませてはならない。

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