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金曜時評

増える社会的弱者 - 編集委員 辻 恵介

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 コロナウイルスとの闘いも3年目に入った。オミクロン株の市中感染が想像以上の速さで広がり、一体どのような形で感染するのかなど不明な点も多い。年末年始に緩んだ生活を引き締め直して、感染症対策を今まで以上にしっかりとやっていくしかない。

 

 コロナが社会のバランスを崩した結果、「格差」は従来以上に広がり、「社会的弱者」が増えてしまった。特に高齢者は、コロナ禍で外出もままならない日々が続いたために運動不足に陥り、足腰が弱ってしまった事例をよく聞いている。独居の高齢者なら、余計にそのリスクが高まる。

 

 令和3年6月に閣議決定された「高齢社会白書」に盛り込まれた一つのデータがある。日本、米国、ドイツ、スウェーデンの高齢者を対象に実施した内閣府の国際比較調査で、日本の高齢者の31.3%が「親しい友人がいない」と回答し、4カ国の中で割合が最大だったことが公表された。米国14.2%、ドイツ13.5%、スウェーデン9.9%と比べると、日本の実態はかなり深刻ではないか。

 

 近所との付き合い方でも、日本は「病気のときに助け合う」が5.0%、「相談したりされたりする」は20.0%で、いずれも4カ国中で最低だった。

 

 さらに、中高年の引きこもりも顕在化。「社会的孤立18歳以上12%」という厚労省の推計もある。こうした社会的孤立を、どうやって減らしていけばいいのか。

 

 何も高齢者だけの問題ではない。厳しい家庭環境から朝食を食べない子どもがいる。親やきょうだいなどの介護を強いられ、勉学・クラブ活動などの時間を奪われるヤングケアラーが存在している。きちんと食事を摂れない子どもたちのために始まった「こども食堂」の活動は全国に広がったが、今では高齢者も交えた形のものに変化した所もあるようだ。

 

 こども食堂の数は、支援団体の調べで、全国で6000カ所、奈良では87カ所という(13日付10面既報)。令和2年の4960カ所から千カ所以上増えて、平成24年の発足以来、過去最多となった。コロナ禍で、子どもの居場所が失われたことなどへの危機意識の表れのようだ。

 

 こうした高齢者や子どもといった社会的弱者を救うためには、行政だけでなく、地域での見守りが欠かせない。若い世帯が増え、自治会への加入率も大きく下がった中で、助け合いの精神を教え、伝えていく地道な取り組みの継続が求められている。

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