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金曜時評

コロナの出口戦略 - 論説委員 松井 重宏

 猛威をふるった新型コロナウイルス感染症の第5波がようやく沈静化してきた。全国各地に発出されていた緊急事態宣言、まん延防止等重点措置も全面解除。そうした中で、以前と同じ状態に戻すのではない、新しい「ウイズコロナ時代」の地域づくりをどう進めるのか、いま改めて出口戦略のあり方が問われている。

 コロナの新規感染者数は県内でも今月に入って1日当たり10人前後まで減少。ワクチン接種率は6日現在、全年代の2回接種済みが63.1%、65歳未満に限っても同49.9%とほぼ半数に達した。こうした状況を踏まえ、経済界などからは行政の軸足を従来の「緊縮」から「緩和」へと移すよう期待する声が高まっている。

 具体的には県が計画する「(仮称)ワクチン接種で安心飲食キャンペーン」や「いまなら。キャンペーン」、国の「Go To Eat事業」など、コロナ禍で打撃を受けた飲食・旅行業界を支援する施策の実施時期が焦点。開会中の9月定例県会では、同施策の早期実施の要望が相次いだ。ただ県は感染者が増加に転じる第6波も懸念、慎重姿勢を見せている。

 同議会の答弁で、荒井正吾知事は、緊急事態宣言などの解除を受けて府県境を越える移動を自粛から一転、促進に急旋回させるようなやり方を批判。「県は来県の自粛を求めたことはない。これまでも、これからも感染に用心して旅行を楽しんでほしい」とし、「感染症との闘いは長く続く。経験を科学的に検証し、ウイルスと共存していける、持続力のある対処を進める必要がある」と訴えた。

 感染拡大で緊急事態宣言などの適用を求める要望が県に寄せられた際、知事は「県内では飲食店の時短は感染防止に効果が認められない」とし、国への要請を否定した経緯もある。その後を見れば、大阪府と県の感染動向に宣言の有無による差は現れず、県判断が支持される結果となったが、緊縮も緩和も確かな情報に基づいて対処する県の姿勢は一貫している。

 昨年春から約1年半にわたり何度も繰り返し徐々に高まってきた流行の波。今回の第5波をピークに感染が縮小に転じるとしても、収束までには同程度の時間が必要になる可能性もある。だとすれば出口戦略には、第6波に備えつつ、即効性ある経済対策を早期に手当すると同時に、中長期の視点を持ち、医療体制の充実やデジタル化社会の定着など、将来に資する施策をしっかり進める周到さも、ぜひ必要だろう。

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