金曜時評

総裁選と衆院選 - 論説委員 増山 和樹

 「菅首相、総裁選出馬変わらず」「岸田氏近く立候補判断」。ちょうど1カ月前、8月24日の紙面は、横浜市長選の結果を受けた菅義偉首相の対応を報じていた。迷走を重ねた末の退陣表明はそれからわずか10日後。政局は大きく動いた。

 今月17日に告示された自民党総裁選には県2区選出の高市早苗氏をはじめ4氏が立候補して論戦を展開している。それぞれが政策を発表し、事実上、次期首相を選ぶ選挙だけに、国民の関心も高い。四面楚歌だった菅首相が退陣を決め、総裁選が党員・党友を含めた本来の形で行われたことで、自民党は息を吹き返した。強い内閣をつくるために政策戦の重要性を指摘し、いち早く総裁選出馬を表明した高市氏の果たした役割は大きいといえるだろう。

 自民党は党内派閥を軸に新陳代謝を繰り返すことで長く与党の立場を維持してきた。今回の総裁選も候補者の論戦と新総裁、新首相の誕生が政権交代のような印象を与えるが、行われているのは政権党の代表者選びであり、有権者の出番はこれからだ。

 長期にわたった安倍政権では森友学園や桜を見る会の問題で政治不信が強まり、菅政権は新型コロナウイルス感染に収束の見通しを示せなかった。4候補は閣僚として政権を支えただけに、傀儡(かいらい)との声もある。何を継承し、何を変革するのか、新首相は来たるべき衆院選に向けて所信表明や代表質問で明確に説明する必要がある。

 11月と見込まれる衆院選は、野党にとっても政権交代への本気度が試される正念場だ。15日に結党1年を迎えた新「立憲民主党」は枝野幸男代表が「菅政権を事実上退陣に追い込むことができた」と胸を張ったが、共感する国民がどれだけいるだろう。共同通信の世論調査で同党の支持率は低迷し、自民の総裁選が盛り上がる中、存在感はさらに薄れている。

 県内に目を転じても、衆院選の県3区には現在のところ、立憲民主の立候補予定者がいない。自民の田野瀬太道氏が2月に離党し、野党第一党の存在感を示す好機だったが、時遅しだろう。3区の有権者は約35万人。みすみす空白区をつくるようでは政権交代はおぼつかない。

 総裁選で勢いを盛り返した自民と伸び悩む野党が衆院選の構図となりそうだが、政策は各党が発表している。先を見通せないコロナ禍の中、国民にどのように向き合おうとしているのか、内容をしっかり吟味したい。

 

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