金曜時評

「国消国産」への道 - 編集委員 辻 恵介

 自粛生活が長引き、帰省や旅行もままならず、唯一の外出が近所のスーパーなどへの食料品の買い出し、という人たちも多いようだ。ただ、マナーの点で首をかしげるような場面にもよく遭遇する。

 キャベツなどの葉もの野菜を手に取り、何回も触りまくった挙げ句、元の場所に戻して立ち去る中年女性。コロナ禍で「接触」に神経をとがらせている人が多いなかで、それはない。別の店でも、周囲を気にすることなく豆腐の棚で手前の商品を動かし、一番奥に手を突っ込んで商品を取り出している人がいた。

 「手前取り」という言葉がある。店の陳列棚で、最前列にある「消費期限」が近い商品から購入することだ。食品の廃棄を少しでも減らすためには、消費期限にこだわりすぎないことが大事だろう。

 8月25日に農水省は「令和2(2020)年度の食料自給率がカロリーベースで37%になった」と公表した。米の大凶作に見舞われた平成5(1993)年度や同30(2018)年度に並び、過去最低の数字になったという。一方、生産額ベースの自給率は67%で、前年度を1ポイント上回ったという。

 輸入に頼りがちな日本の食の現状は、非常に心もとない。異常気象などによる気候変動や、輸出国の国策に影響されやすい輸入品に頼らず、国産品の需給を増やしていく取り組みが必要ではないか。

 大雨や猛暑の影響からか、レタス、ジャガイモなど一部の野菜が高騰。少し前、キュウリは1本80円前後もしていた。小麦、コーヒーや鶏肉など、輸入食品の値上げも予想されている。退任する菅首相は「自助努力」を国民に求めたが、次のリーダーには食料政策を見直す取り組みを進めてほしい。

 輸入依存からの脱却は、国民の理解と協力が必要だ。国産品の流通を増やすには、輸入材料が中心になっている冷凍食品に国産材料を使うことなどが求められる。その分、価格が上がることを納得した上で、国民が国産品を求めるという動きが必要ではないか。

 JA全中(一般社団法人・全国農業協同組合中央会)は9日、10月16日の「世界食料デー」に合わせて、この日を「国消国産の日」としたと発表。記念日の制定で、国民が必要とし消費する食料は、可能な限り国内で生産する「国消国産」への理解を広げる取り組みを進めていくという。

 「コロナ後」の世界を見据えて、次のリーダーには、「食料安全保障(食料安保)」実現のために努力することを願っている。

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