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金曜時評

丁寧さが足りない - 論説委員 増山 和樹

 令和13年の県開催が内々定している国民スポーツ大会(国体)の主会場整備について、橿原市は14日の市議会特別委員会で、市営橿原運動公園に誘致する方針を示した。県はかねてから、同市内の県立橿原公苑と市営橿原運動公園を全面交換し、国体の主会場として整備するプランを市に提示している。両者の方向性がおおむね一致した形だ。

 運動公園には硬式、軟式の野球場やサッカー場、テニスコート、総合プールなどがあり、多くの市民に利用されている。国体の主会場整備となれば、日本選手権なども開ける第1種陸上競技場が建設される見込みで、現在の運動公園は大きく姿を変えることになる。14日の委員会で市は、ジャンボスライダーなどがある総合プールについて「現時点では廃止が妥当」とした。県は現在のプールがある場所に新たな施設を整備したい意向を示している。

 夏の週末、ジャンボスライダーの階段に子どもたちがびっしりと並んで順番を待つ光景を毎年見てきた。維持管理費と利用者数のバランスから、財政的にはお荷物施設なのだろうが、残念に思う市民も多いだろう。

 橿原運動公園は競技を楽しむ人と子どもを遊ばせたりする人が適度に混じり合う憩いの場として定着した。市が長年かけて整備してきた市民の財産だが、総合プール以外の施設も含め、何がどのように変わるのか、代替施設は整備されるのか、見えないことが多過ぎる。県と協議を進める足元で、市民が置き去りにされていないか。県立橿原公苑との交換には、資産評価の問題もある。

 橿原市では、老朽化した市庁舎への対応も課題となっている。亀田忠彦市長は現在地での建て替えを断念し、かしはら万葉ホールなど既存の3施設に市役所機能を分散移転させる方針を打ち出した。当初見込んでいた建て替え事業費が、地盤の強化などで12億円近く膨らむことが断念の理由だ。現在の市庁舎は解体し、公共性の高いにぎわい施設を造るという。

 ただ、分散移転案は唐突で、「現在地なし」が規定路線のような印象を受ける。しかも、市庁舎の移転に必要な市議会の議決が得られる可能性は低いという。ならば、市庁舎の問題をどこへ落ち着かせようとしているのか、市長の考えが見えてこない。

 橿原運動公園の整備と市庁舎問題、二つの事業に共通して足りないのは、市民が納得できる丁寧な説明だろう。

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