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金曜時評

特色ある“受け皿” - 編集委員 辻 恵介

 平成30(2018)年に策定された県立高校適正化推進方針(4月)と同実施計画(10月)。概ね10年間の計画がまとめられ、それらに基づき、令和2(2020)年度に国際高校が開校した。21年度も奈良商工(奈良朱雀)、高円芸術(高円)、商業(奈良情報商業)、奈良南(大淀・吉野)の4校がスタートしており、再編が進んでいる。

 5月31日に開かれた県教育委員会(吉田育弘教育長)の定例委員会では、「学科再編」の話が報告された。山辺高校(奈良市)で、来年4月から知的障害のある生徒を対象にした学科「自立支援農業科」が設置されることなどが承認された(6月1日付3面既報)。

 障害のある生徒と障害のない生徒が共に学ぶことを「インクルーシブ教育」と呼ぶそうで、その実践推進が目的という。県教委によれば、専門学科を設けて実践するのは全国初の取り組みだそうだ。

 同学科の定員は20人。農業に関する探究的な学習に取り組み、個々の障害の状態に応じた個別の教育支援・指導をしていく。同時に障害のない生徒を対象にした学科「生物科学探究科」を設けて、農業に関して共に学習する。

 これまでは、インクルーシブ教育の推進校として二階堂、高円、山辺の3校に高等養護学校の分教室を設置していたが、会見した吉田教育長によれば、従来の交流学習の域から一歩踏み出し、さらに実践を進め、農福連携の担い手育成を目指す、という。「共に生きる」社会の実現へ向けて、希望の持てる具体策の一つに思えた。

 一方、来春開校する宇陀高校(宇陀市)は、大宇陀と榛生昇陽の両校が再編されるもので、「普通科」「情報科学科」「こども・福祉科」に加えて「介護福祉科」を設置。令和5(2023)年4月には、福祉先進国のフィンランドを参考にした、高齢者や児童、障害者の福祉を専門的に学ぶ「ラヒホイタヤ科」も設置する予定。

 ラヒホイタヤとは聞き慣れない言葉だが、フィンランド語で「身近で世話をする人」の意味だとか。「福祉と健康両分野の共通基礎資格」で、同国では平成5(1993)年に創設された。介護の分野で人手不足が予想される中、日本でも厚労省が導入を検討した、今も注目されている資格だ。

 小中学生には、奈良県内には特色のある学校・学科があることを知って、自分の将来のことを考える際の参考にしてほしい。“受け皿”がいろいろあって、選択肢が広がることは望ましいことだ。

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